2020.6.17
, EurekAlert より:
環境汚染物質によるエピゲノムの変化が、西洋型の高脂肪食によって「目覚める」ようだ、という米国ベイラー医科大学からの研究報告。
エピゲノムは、しばしばゲノムの「ソフトウェア」や「オペレーティングシステム」にたとえられる。それは染色体を構成するDNAとたんぱく質を小さな化合物で修飾することによって、遺伝子の発現をコントロールしている。
生命の初期、まだ臓器が発達している時期には、エピゲノムは正常な発育に沿ってそれをガイドするように変化する。内分泌かく乱物質(EDC)は、この「ソフトウェア」を広範囲に再プログラムする。この再プログラムは個人の中で保持され続ける。臓器によっては、この再プログラムによる脆弱性が発育の過程で現れてくる。
「本研究において我々は、肝臓の発達中には、ある種の化学物質への短い曝露でさえも、肝臓のエピゲノムを早期に加齢させる可能性があることを発見した。これらEDCへの曝露によって、若い肝臓が成人のエピゲノムシグネチャを獲得するのである」と筆頭研究者のチェリル・ウォーカー教授は語っている。「けれども、このエピゲノムの早期の加齢は、人生の後期になるまで健康影響を持たない。あるいは高脂肪食に曝露しない限りは。」
健康な肝臓においては、エピゲノムは正常な加齢プロセスを経る。本研究では、EDC曝露後、このプロセスが加速されることが観察された。6日齢のラットが、通常成獣に見られるのと同じ正常なエピゲノムを持っていたという。
「この代謝機能の変化の影響はただちには現れない。代わりに、時限爆弾のように、動物に西洋型の高脂肪、高砂糖、高コレステロールの食事を与えると出現した」とウォーカー教授は語っている。
ラットは、まずEDCに曝露し、その後、西洋型食事を与えられると、同じEDCに曝露したが健康的な食事を与えられたラットに比べて、代謝障害を起こし易くなったという。健康的な食事を与えられたラットのエピゲノムも再プログラムされていたが、それは発現しなかったのである。
「本研究は、環境汚染物質への曝露によって我々の身体が如何に病気にかかり易くなるかを示すものである」とウォーカー教授は言う。「また、高脂肪食の影響を特に受け易い人がいるという事実は、我々がすでに環境因子に曝露した証拠なのかもしれません。」
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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