2020.5.18
, EurekAlert より:
科学者は、間違った場所で、健康誤情報と戦っているのかもしれない、という米国ジョージワシントン大学などからの研究報告が『ネイチャー』誌に掲載された。
確立された健康ガイダンスを疑うFacebook上のコミュニティは、政府の健康関連機関や関連健康グループよりも、「決めていない」個人に到達し取り込むことに効果的であるようだ。
研究チームは、この種の物としては世界初となる、1億人のFacebookユーザ間の2019年はしかアウトブレイク中のワクチンに関する会話を追跡するマップを作成した。この新研究とその「戦場」マップが明らかにしたのは、確立された健康ガイダンスへの不信がオンライン上の会話でいかに蔓延し優勢となっていくかを明らかにしている。これは、COVID-19から国民を守るべき公衆衛生当局の潜在的な脆弱性を示唆するものであるという。
ニール・ジョンソン教授ら研究チームは、特にワクチンに関連して、科学的権威への不信がオンライン上でいかに発達していくかを理解するためにマイアミ大学、ミシガン州立大学、ロスアラモス国立図書館と共同して研究を進めた。
「ここには健康と科学の専門家に対する信頼を取り巻くオンライン世界戦争が、特にCOVID-19についての誤情報についてのそれが存在する。それはまた製薬企業や政府に対する不信でもある」とジョンソン教授は言う。「だれもそれがどのような戦場であるかを知らなかった。そこで我々はそれを見つけられるようにしたのである。」
2019年はしかアウトブレイクの間、研究チームは1億近いユーザがいるFacebookコミュニティを調査した。そこではワクチンに関するトピックが活発に飛び回り、高度にダイナミックで相互接続されたネットワークを都市間、国家間、大陸間、言語間で形成されていた。研究チームは、3つのキャンプを同定した。ワクチン推進コミュニティ、ワクチン否定コミュニティ、保護者グループのような未決者コミュニティである。ひとつのコミュニティから始め、研究チームはオリジナルに強くからみつく次のコミュニティを探し、そのようにして、彼らがどのように相互に交流したかを理解した。
研究チームが発見したのは、Facebook上の否定的感情をもつ個人は、推進的感情をもつ個人よりも少ないが、Facebook上の否定派コミュニティは、推進派コミュニティの3倍近く存在するということだった。そのため、否定派コミュニティは、未決者コミュニティと関係を持ち易く、推進派コミュニティは大部分が周辺部に追いやられていた。加えて、推進派コミュニティは、より大きな否定派コミュニティに対抗することに焦点をあてており、中規模のコミュニティがレーダーの陰で成長していくのを見逃しがちだった。
研究チームはまた、否定派コミュニティが、より多様な語り口を使って安全性についての懸念、陰謀説、個人の選択権を呼び覚ますことで、影響力を増したことを発見した。他方、推進派コミュニティは、確立された公衆衛生上の健康に焦点を当てたお決まりのメッセージに終始した。研究チームは、未決者コミュニティの個人が受動的な傍観者からは程遠く、ワクチン情報に積極的に関与していたことを記している。
「我々は、主要な公衆衛生当局や関連団体がオンラインバトルの中心にいると思っていたが、逆だった。彼らは一方の側、間違った場所で戦っていた」とジョンソン教授は語っている。
世界中でCOVID-19に対する効果的なワクチンの開発が進む中、健康についての偽情報や誤情報の蔓延は重大な公衆衛生問題となる。特にソーシャルメディアはしばしば情報の増幅器として作用する。研究の中で、研究チームは偽情報に対抗するために、未決者コミュニティの不均一性に影響して蔓延を遅らせる方法や、コミュニティ間のリンクを操作することなど、いくつかの異なる戦略を提案している。
「もぐらたたきをするのではなく、我々のようなマップを用いて、最大の脅威がどこにあるのかを同定し中和するための完全に新しい戦略を生み出すことができるかもしれない」とジョンソン教授はコメントしている。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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