2020.5.15
, EurekAlert より:
認定された運動生理学者による個別エクササイズプログラムは、高齢者介護施設の入居者に身体的な利点を提供するだけでなく、精神衛生・社会的関与を改善するようだ、という豪エディスコーワン大学からの研究報告。
アネット・レイノル准教授率いる研究チームは、パースにある3か所の居住型高齢者介護施設で12週間の高齢者エクササイズプログラムの効果を検証した(介入群13名、対照群11名)。
専門家によれば、23万人に及ぶ豪州の施設入居高齢者の半数以上がうつ病の症状を経験しているという。
今回の研究は、認定された運動生理学者による入居者の身体的および精神的ウェルビーイングの治療プログラムについて、その実現可能性と有効性の予備的なエビデンスを提供するものであるという。
レイノル准教授によれば、先行研究ではレジスタンストレーニングと転倒防止のためのバランスプログラム、そして運動機能と可動性の増進を目指すという身体的な効果に焦点を当てたものが多かった。
「身体的なアウトカムに焦点を当てると、それと同時に達成することが可能な精神的な利益、例えば自立性の促進、気分の向上、不安感の低下といったものの意義が低下しがちになる」とレイノル准教授は言う。
それに対して、本プログラムでは、バランス、筋力、柔軟性、可能性の改善だけでなく、高齢者の自立性意識や社会参加意識の向上がみられた。また個別に組み立てられたプログラムによって、高齢者が個人的なつながりや認知機能や身体機能の障害に関連した特殊なニーズを強化することにも役立ったという。
「我々の研究に参加したある女性は脳卒中を経験しており、自分で服を着られず、トイレにも行けなかった。脳卒中になる前の彼女はきわめて自立的だったので、現在の状況に不満がたまっていた。この運動プログラムによってある程度の自立性を取り戻したことによって、彼女は自分自身でクラスに参加し自分で服を選びトイレにも行けるようになった」とレイノル准教授は語っている。
「我々が求めていた変化がここにはある。身体機能の向上はもちろん、それが高齢者の生活の質にもたらした追加の利益は、プログラムの意義を立証した。」
出典は『加齢身体活動雑誌』。 (論文要旨)
|