2020.5.1
, EurekAlert より:
あつあつのお汁粉をすすったときに広がる甘味が、冷蔵庫で冷やしたぜんざいには感じられない理由がわかった、という米国カリフォルニア大学からの研究報告。
クレイグ・モンテル特別栄誉教授ら研究チームは、ショウジョウバエを用いた動物実験で、この現象に関与するひとつのプロセスを発見した、と『最新生物学』誌に発表した。
食品の温度が低下すると甘さが低下するが、それは甘味ニューロン自体には関係なく、元来は眼にある光を感知するプロセスの中で発見されたたんぱく質が関与する別の近く細胞を通じて起こるのであるという。だからといっても、冷たい食品の甘さの近くに光が関与しているわけではないようだ。
「食品の味は、単に化学組成だけで決まるのではない」とモンテル教授は言う。「我々は既にヒトでも低温が甘さを損なうことを知っている。」
研究チームは、ショウジョウバエのエサに対する興味が、23℃と19℃で有意に異なることを発見した。けれども、その時ショウジョウバエの甘味ニューロンの活性には変化がみられなかった。
「温度は直接甘味ニューロンには影響しないので、別の種類の細胞に影響するのだろう。それが間接的に甘さに影響を及ぼしているのだ」とモンテル教授は記している。
ハエは甘味をあるタイプの味覚ニューロンで検出する。苦味は別のタイプのニューロン、機械感受性ニューロンは固さのような食品のテクスチャを検出する。けれども、温度感覚はそのように単純ではないという。苦味と機械感受性ニューロンも冷たさの検出には関与している。両方が活性化されたときだけ、脳はそれを冷感信号と解釈する。
これらのすべての刺激が動物の食欲を低下させる、とモンテル教授は言う。苦味物質は苦味ニューロンを刺激してハエの摂食を止める。固い食品は機械感受性ニューロンを刺激してハエの摂食を止める。低温がその両方の刺激すると同じ効果が起きる。
このとき反応に関わる重要なたんぱく質がロドプシン6である。このたんぱく質は、視覚において重要であるが、数年以前、モンテルらのグループがロドプシンは他の種々の近くにも関与していることを発見した。実際、数週間前にモンテルらのグループは、化学味覚にこのクラスのたんぱく質の異なるメンバーが関与していることを発表したばかりである。
「苦味ニューロンは、Rh6というロドプシンを発現している。これがないハエでは、低温はもはや甘味の魅力を減じることはない」とモンテル教授は言う。
Rh6がないハエでは、苦味と冷感を検出するニューロンは低温で活性化されることがない。冷感には複数のタイプのニューロンの活性が必要なので、Rh6を喪失したハエは冷感を認識しなくなるようだ。そのため、甘味が低温で魅力を低下させることはない。
「驚くことは、実際他のニューロンがその活性を調節していたことだ。冷感が他のニューロンで活性化されると、それが間接的に甘味ニューロンを浴せうするのである」とモンテル教授は述べている。
出典は『最新生物学』。 (論文要旨)
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