2020.4.30
, EurekAlert より:
半径100km以内から自分たちの主食を調達できる人々は、世界中で3割に満たないようだ、というフィンランド・アールト大学などからの研究報告。
近年、グローバリゼーションは食糧生産と消費に革命をもたらし、農作物の栽培ははますます効率的になってきた。その結果、食事は多様化し、さまざまな食品が世界中のいたるところで入手可能になってきた。けれども、これは世界人口のかなりの部分が、食糧輸入に依存する国に住むようになったということである。そのため、世界中の食糧サプライチェーンが止まってしまうように世界的な危機が訪れた時の脆弱性が増大することになった。
筆頭研究者のペッカ・キヌーネンによれば、地域によって大きな違いがあるという。たとえば、欧州と北米では、小麦などの温帯作物は、半径500km以内でほとんど入手可能であるのに、世界平均は半径3,800kmになるという。
今回の研究で、キヌーネンら研究チームは、世界中の人間における農作物生産と消費の間の最小距離、つまり彼らの食糧需要を満たすためにヒトがどれくらいの距離を行かなければいけないかを計算した。以下の6つのカギとなる作物グループが考慮された。温帯穀物(小麦、大麦、ライ麦)、米、トウモロコシ、熱帯穀物(粟、モロコシ)、熱帯根菜(キャッサバ)、パルス(豆)。研究チームは、通常の生産条件の場合と、食品廃棄が減り栽培法が改善されたより効率的な場合の、2種類についてモデル化し、生産者と消費者の距離を算出した。
解析の結果、温帯穀物を半径100km以内で調達できる人々の世界人口に占める割合は27%だった。同様に、熱帯穀物は22%、米は28%、パルスは27%だったという。トウモロコシと熱帯根菜の場合には、わずか11-16%であった。
主任研究者のマッティ・クンム准教授は、「この結果は、人々が地元の生産物だけでは食糧需要を満たすことができないことを明確に示している。少なくとも、現在の生産方法と消費習慣においては満たせない。効率的に管理された国内生産を増やすことで食品廃棄と温暖化ガスの両方を削減できるだろう」とコメントしている。
出典は『ネイチャー食品』。 (論文要旨)
|