2020.4.20
, EurekAlert より:
血液中の代謝物をメタボロミクスという技術を用いて網羅的に解析することで、加齢性疾患である「フレイル(虚弱)」に関連する血液バイオマーカーを同定した、という沖縄科学技術大学院大学(OIST)と京都大学の共同研究。
研究チームは、認知機能を測定するEdmonton frail scale (EFS)、Montreal cognition assessment (MoCA-J)、運動能力を測定するTimed Up and Go Test (TUG)という3つの臨床検査を用いて、75歳以上の高齢患者19名を調べた。
「これら3つの検査から、健康状態、気分、短期記憶、その他の兆候も示されたことで、誰がフレイルの状態にあるのかがはっきりとわかりました」とOISTの柳田充弘教授は説明している。
測定の結果、19名のうち9名がフレイルに該当することがわかった。フレイルに該当しなかった残りの10名についても、一部の人には認知機能の低下や、運動機能の低下が起こっていることがわかった。
次に、19名の患者から血液サンプルを採取し、メタボライト(血液を構成するアミノ酸、糖、ヌクレオチドなどの小分子)を詳しく調べた。131個のメタボライトを分析し、そのうち22個がフレイル、認知機能低下および可動性の低下に関連していることを突き止めた。これらの病態を持つ患者は、22個のメタボライトのほとんどの数値が低い傾向にあったという。
同定された22個のメタボライトは、抗酸化やアミノ酸、筋肉、窒素代謝などに関連するものだった。そのうち15個はフレイルと相関し、6個は認知機能の低下を、12個は運動機能の低下を示した。フレイルと相関するメタボライトで、認知機能マーカーと重複したのは5個、運動能マーカーと重複したのは6個だった。
「血液中のメタボライトは、フレイルの兆候・症状を発見、診断、モニターするためのバイオマーカーとして使うことができます」とOISTの照屋貴之博士は説明する。「血液検査という簡単な方法で、軽度な段階から診断を開始することができ、早期介入によって健康寿命を延ばすことが可能になるかもしれません。」
「特に、フレイルの患者では、抗酸化成分であるエルゴチオネインの値が低下していることがわかりました。エルゴチオネインには神経保護作用があります。これは、フレイルの人が酸化ストレスに対してより脆弱な状態にあるということを意味します」と柳田教授はコメントしている。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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