2020.3.4
, EurekAlert より:
全脂肪(脂肪分を抜き取っていない)の乳製品を摂取している子どもに、肥満や心疾患リスクの上昇は特にみられないようだ。低脂肪乳製品を子どもに推奨している国々があるが、本研究はそれに疑問を呈する結果となった。豪・エディス・コーワン大学の報告。
この研究は、子供の全脂肪乳製品の摂取状況を調査した世界中の29の研究をレビューしたもの。
研究者は、全脂肪乳製品の摂取と子供の体重増加、高コレステロール、高血圧との間に明確な関連性がないことを見出した。ただし、ほとんどの研究は観察的研究であることから、質の高い研究の不足も指摘されている。
研究の筆頭著者であるオサリバン准教授は、今回の発見はこの分野における、より質の高いエビデンスの必要性を強調したと述べている。
「豪州などの国の食事ガイドラインでは、子供たちが健康的な体重と心血管の健康を維持するために、主に低脂肪乳製品を摂取することを推奨しています」とオサリバン准教授。さらに、
「各研究はいずれも、全脂肪乳製品は体重増加または肥満レベルの上昇と関連していなかったとまとめられていました。 低脂肪乳製品は、エネルギーと飽和脂肪含有量が低いことから、一般的に2歳以上の子どもから成人に推奨されています。しかしながら、全脂肪よりも低脂肪の乳製品を摂取していた子供たちは、実は(低脂肪であることによって減った)脂肪由来のカロリーを、他の食物に置き換えてしまっていることを示唆しています。
これは、低脂肪乳製品では全脂肪乳製品ほど満たされないために、子供たちが他の食品を余計に摂取してしまう可能性を示唆しています。健康への影響は、代わりに何を食べるかによって異なってきます」
小児肥満が重要な問題であることから、親たちに対する「エビデンスに基づくガイドライン」の必要性がかつてないほど高まっている、と准教授。「子どもたちには低脂肪を」との既成概念を再考してもらうに足るだけの質の高いエビデンスがもっと必要とのことだ。
准教授はまた、育ち盛りの子供たちのバランスの取れた食事において、全脂肪乳製品が重要な役割を果たす可能性があると述べている。
「乳製品は、たんぱく質、カルシウム、カリウム、リン、複数のビタミンを含む、健康な発育のための栄養源となります。全脂肪乳製品に含まれる脂肪はほとんどが飽和脂肪ですが、脂肪の多い肉などの食品で見られる健康への悪影響とは関係がないようです」
質の高いエビデンスを得るため、准教授らのチームはランダム化比較試験によって、子供の乳脂肪摂取の影響を調査しており、結果は2020年の中頃に明らかになる見込みであるとのことだ。
出典は『栄養学の進歩』。 (論文要旨)
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