2019.11.5
, EurekAlert より:
アルコール中毒や胎児アルコール症候群の新たな治療標的の可能性を示唆された、というマウスモデルを用いた米国ペンシルバニア州立大学からの研究報告。
アルコールの分解産物として肝臓で多く生成する酢酸が脳に運ばれ、直接DNA機能を制御するたんぱく質を修飾するようだ。ヒストンと呼ばれるDNAをパックするたんぱく質のアセチル化にこの酢酸が使われているのだという。ヒストンのアセチル化は遺伝子のエピジェネティックな変化として知られ、遺伝子発現のスイッチになるものだ。
研究チームは、安定同位体で標識したアルコールを摂取したマウスで、そのアルコールから生成した酢酸がACSS2と呼ばれる酵素を介して脳のヒストンのアセチル化に直接使われていることを実証した。ACSS2は、神経細胞核内の遺伝子調節に関わり、学習に重要な記憶遺伝子を活性化する。
脳のACSS2の発現を低下させたマウスでは、アルコールを嗜好する学習が行われなくなった。この学習は、長期の禁酒の後でも渇望と再発の主要な原動力となる。
研究チームはまた、妊娠マウスにアルコールを摂取させると、胎児の脳のヒストンのアセチル化にアルコール由来の酢酸が使われることも示している。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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