2019.8.19
, EurekAlert より:
英国では、肥満者(BMI>30)の割合は29%に達し、2030年には35%まで上昇することが予測されているが、それは疾病と認識すべきなのだろうか。専門家の見解は?
肥満が、過剰な体脂肪が蓄積し、健康に悪影響を及ぼす状態であるとすれば、それは疾病の定義を満たすものだ、と英国リバプール大学のジョン・ワイルディング教授らは語る。
体重に影響する遺伝子は200以上わかっており、その多くが脳と脂肪組織で発現する。「かように、体重、脂肪分布、合併症のリスクは生物学的な影響が強く、もし肥満になったとしても、それは個人的な過ちとはいえない。」
教授らは、近年の肥満の増加は、遺伝的なものではなく、環境の変化(食糧可用性、価格、物理的環境、社会的因子)によるものではないか、としている。
「広くいきわたった見解によれば肥満は自己責任であるが、肥満が重度の合併症を伴う慢性疾患だと認識すれば、肥満者が経験する汚名と差別を減らすのに役立つだろう。」
肥満が疾病であると認めない限り、肥満の流行を抑えることはできないだろう、と教授らは結論付けている。
けれども、医師でNHSハーツバレー臨床コミッショングループのリチャード・パイル博士は、そのようなアプローチは、実際には個人と社会に悪い結果をもたらす、と主張する。
「辞書の疾病の定義は、漠然としているほとんどすべてのものを疾病にできてしまう。」
博士によれば、肥満を疾病として分類することは、患者の自立性を低下させ、自ら治そうとする動機づけを弱めてしまう危険性がある。
「患者が責任を負うべき要因を認め、それを制御することと、他の誰かが治療するべき疾病との間には心理的に重要な違いがある。」
「変化を可能にするためには自己決定が重要であり、殆どの人にとって肥満は社会的なものであって、解決策もまたそこにあることを認識すべきであろう」と博士は結論している。
出典は『英国医学雑誌(BMJ)』。 (論文要旨)
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