2019.7.30
, EurekAlert より:
食物繊維が豊富な健康的な食事は、すべての人に推奨されるものだが、妊娠中の母子の健康にとっても重要かもしれない、という豪州シドニー大学からの研究報告。
食物繊維は、腸内細菌によって分解、代謝され、免疫系に影響する種々の代謝産物を作り出す。研究チームは、妊娠中にこれら腸内細菌が作り出す代謝物の役割を検討した。
主任研究者のラルフ・ナナン教授は、「リアルフード、大部分は植物性で、食べ過ぎない、という単純な推奨は、現代社会の最も深刻なコンディションにある者に最も効果的な一次予防の戦略であろう」と語る。「母体の腸内細菌と食事が健康な妊娠を促進する鍵であるようにみえる。」
今回の研究では、ヒトで酢酸レベル(腸内で食物繊維の醗酵によって作られる)が低下することと、子癇前症に関連があることが発見された。
子癇前症は、10%の妊婦に起き、高血圧、たんぱく尿、重度のむくみが母親に起こる。それはまた胎児の免疫系の発達を妨害し、いくつかのエビデンスによればアレルギーと自己免疫疾患のリスクを高めることが示唆されている。
研究チームは、子癇前症が重要な胎児の免疫器官である胸腺の発達に影響することを発見した。子癇前症における胎児は胸腺が健康な妊婦の胎児に比べて小さかったという。
胸腺が作り出すT細胞は、アレルギーと自己免疫疾患の予防と関連するといわれているが、子癇前症の後では生後4年たっても低い状態に留まるという。
胎児の免疫系の発達に対する酢酸のメカニズムは、マウスを用いた別の実験によって検証され、酢酸は胎児の胸腺とT細胞発達を駆動する中心的な役割を果たすことが示された。
これらの結果が示唆しているのは、妊娠中に腸内細菌の特異的な代謝生成物を促進することは、健康な妊娠を維持し、アレルギーや自己免疫疾患のリスクを低下させるための効果的な方法であるかもしれないということだ、と研究者らはまとめている。
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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