2019.7.30
, EurekAlert より:
実験動物の不安様行動を評価する高架式十字迷路試験により、抹茶および抹茶抽出物を摂取させたマウスの不安様行動が軽減されることを発見した、という熊本大学からの研究報告。
この効果には、不安行動と関わりの深いドパミンD1受容体およびセロトニン5-HT1A受容体の活性化を介した機序も関与するようだという。
抹茶は、チャノキ(Camellia sinensis)をシートで覆う特殊な方法で栽培した後に摘まれた新芽の茶葉を茶臼で碾いた超微粉末であり、日本の伝統ある嗜好品である。現在では「Matcha」として世界中で親しまれているが、日本において抹茶は医薬品のように扱われてきた歴史を持つため、リラックス効果、美白効果、肥満予防効果など、私たちの体にとって様々な有益作用が期待されている。
今回、研究チームは、マウスの不安関連行動を評価する高架式十字迷路試験により、抹茶に不安様行動を軽減させる効果があることを見出した。また、様々な抹茶抽出物の抗不安活性を評価したところ、抹茶を熱水で抽出したエキスに比べ、80%エタノールで抽出したエキスに強い抗不安活性が認められた。つまり、水に溶けやすい成分よりも、水に溶けにくい成分の方が抗不安活性が強いようだ。さらに行動薬理学的解析から、抹茶および抹茶抽出物が不安を軽減させる作用には、いずれも神経伝達物質と結合する「ドパミンD1受容体」および「セロトニン5-HT1A受容体」の活性化を介した機序が関与することも明らかにした。
研究を主導した倉内博士は次のようにコメントしている。
「疫学調査研究等を実施する必要がありますが、今回の研究成果は、古くは医薬品として扱われてきた抹茶(Matcha)が私たちの体に有益な作用をもたらす可能性を示しています。嗜好品として生活に根付いている抹茶を世界に伝承することで、日常生活から健康を増進できる新しいライフスタイルの提案につながることが期待されます。」
出典は『機能性食品雑誌』。 (論文要旨)
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