2019.7.19
, EurekAlert より:
ヒトが「太った霊長類」になったのは、白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に転換する遺伝子の働きが低下したためであるようだ、という米国デューク大学からの研究報告。
ヒトに近い霊長類と比べると、シックスパックの腹筋を持つヒトでもかなりの体脂肪を持っている、と研究者らは言う。他の霊長類の体脂肪率は9%未満だが、ヒトの健康的な体脂肪率は14-31%とかなり高い。
ヒトが太った霊長類になった原因を探るため、デヴィ・スワイン=レンツ博士ら研究チームは、ヒトとチンパンジー、アカゲザルの脂肪を比較した。ATAC-seq解析と呼ばれる技術を用いてそれぞれのゲノムをスキャンして、脂肪細胞のDNAがどのようにパックされているかを調べた。
通常大部分のDNAは細胞内でコイルとループに纏められ、たんぱく質の周りに固く巻きつけられており、一部のDNA領域だけが緩んで遺伝子のスイッチにアクセス可能になっている。
研究チームは、チンパンジーとアカゲザルではアクセス可能だがヒトではそうでない約780領域が存在することを発見した。この領域についてさらに調査した結果、それが脂肪細胞を白色脂肪細胞からかっしょう脂肪細胞に転換することを助けるDNA領域であることを突き止めたという。
ヒトとチンパンジーが枝分かれした600-800万年前以降、ヒトの脳は約3倍に拡大した。チンパンジーに脳はほとんど変化していない。脳は最もエネルギーを必要とする臓器であり、そのために熱産生して身体を温める褐色脂肪細胞よりもエネルギーを蓄積する白色脂肪細胞のほうがヒトの生存に有利だったのではないか、と研究チームは考察している。
出典は『ゲノムと生物学の進化』。 (論文要旨)
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