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[病気]  食物アレルギー新治療法への道、プロバイオティクスで
2019.6.27 , EurekAlert より:   記事の難易度 1
  

食物アレルギーからヒトを保護してくれる細菌群がヒトの腸内細菌から特定された。この細菌群をマウスに経口摂取させたところ、免疫システムをリセットし、アレルギーの発症予防や治療ができることが分かったという。米国ブリガム&ウィメンズ病院などの研究。

現在、米国では食物アレルギーが原因で3分に1人が救急救命室に運び込まれるとされるが、食物アレルギーを持つ人がアレルギー反応を防ぐためには、原因食品を完全に除去するしかない。研究者らは食物アレルギーの予防や完治のための方法を懸命に模索している。最近の研究では、腸内細菌の変化が食物アレルギー発症に中心的役割を持っていることが示唆されている。

ブリガム&ウィメンズ病院とボストン小児病院の研究者らは、ヒトの乳児において、食物アレルギーから保護する腸内細菌を特定、食物アレルギーの発症と免疫反応の改変に関連した変化を発見した。さらに、食物アレルギーを持つマウスを用いた実験では、ヒトの腸内細菌5〜6種を配合した経口製剤を与えたところ、マウスを食物アレルギーから守り、アレルゲンへの耐性を強化することによって治すことを見出した。

責任著者のブライ博士は「この結果は、食物アレルギーの治療がめざましい変化をとげることを意味しています。私たちは、食物アレルギーからの保護に関連する微生物と患者に関連する微生物を特定しました。(マウスによる)前臨床モデルにおいて、有用菌の複合体を治療薬として投与すれば、食物アレルギーの発症予防ができるだけでなく、治すことも可能です。これらの微生物を用いて、私たちは免疫システムをリセットしたのです」などとしている。

研究チームは、食物アレルギーに関与する主要な細菌を知るために、ヒトとマウスモデルの両方を用いて研究を行った。まず、食物アレルギーを持つ乳児56人から4〜6ヵ月ごとに糞便サンプルを数回収集し、食物アレルギーでない乳児98人と比較したところ、多くの違いのあることが明らかになった。

次に、食物アレルギーの患児・健常児の便から採取した細菌のいずれかを、卵に感作したマウスに移植した。すると、健常児からの細菌を移植されたマウスは、患児からの細菌を移植されたマウスよりも卵アレルギーから防御されていることがわかった。

そして、コンピュータを用い、食物アレルギーからの保護/発症に関連する細菌を同定するために、患児と健常児との腸内細菌の違いを解析した。この結果から、食物アレルギーから守ると考えられた細菌をマウスにを経口投与することで、発症を防ぐことができるかどうかを確認するための実験を行った。ここで投与されたのは、独自に開発した細菌の混合体で、クロストリジウム属またはバクテロイデス属に属す、ヒトの腸由来の5〜6種を用いたもの2種であったが、いずれの混合体もマウスの卵アレルギーを完全に抑制したという。他の種類の細菌を与えてもこのような効果はみられなかったという。

「腸内のすべての微生物を調べて、それらが食物アレルギーに対し何をしているのかを理解するのは非常に複雑ですが、コンピュータによるアプローチを使用することによって、特定の微生物群に絞り込むことができました」などと筆頭著者のガーバー博士は述べている。

これらの細菌が食物アレルギーの感受性にどのように影響を与えているかを理解するために、研究チームはまた、ヒトの乳児とマウスの両方における免疫学的変化を調べた。すると、クロストリジウム属とバクテロイデス属の混合体が2つの重要な免疫学的経路を標的とし、免疫系を調節する細胞の一種である、抗原特異的な制御性T細胞に作用し、アレルギー反応の代わりに寛容反応を促進するように変えたのだという。この効果はマウス・ヒト乳児の両方で見られた。

この新しいアプローチは、現在行われている経口免疫療法とはまったく対照的なものだ。経口免疫療法では、患者に与える食物アレルゲンをの量を少しずつ増やすことによって、アレルギー反応を引き起こす閾値を上げることを目的とした戦略だ。しかし、有用菌を用いた今回のアプローチでは、アレルゲンに依存しない方法で免疫系の「配線」を変化させ、患者を特定のアレルゲンに鈍感にさせるのではなく、広範囲に食物アレルギーを治療する可能性がある。さらなる研究の進展に大きな期待が持たれる。

出典は『ネイチャー医学』。 (論文要旨)      
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