2019.6.24
, EurekAlert より:
胎児の神経幹細胞が加工食品に保存料として添加される高濃度のプロピオン酸に曝露することで分子レベルの変化を起こすのではないか、という米国セントラルフロリダ大学からの研究報告。
自閉症の子供に過敏性腸症候群が多いことが報告されていることから、研究チームは、腸と脳の間の関連を疑い、自閉症患者とそれ以外の人々の腸内細菌叢の違いに興味をもったという。
主任研究者のサレー・ナーセル博士は「自閉症児の便中にはプロピオン酸が多いこと、自閉症児の腸マイクロバイオームは異なっていることが研究で示されている」と語っている。
研究チームは、神経幹細胞に過剰量のプロピオン酸を曝露するといくつかの方法によって脳細胞が障害されることを発見した。まず、プロピオン酸はニューロンの数を低下させグリア細胞の数を増やして脳細胞の自然のバランスを崩す。グリア細胞はニューロンの発達と機能を助けるが、多過ぎるとニューロンの結合を妨げる。それはまた炎症を起こす原因となるが、それも自閉症児の脳について既知の事象である。
過剰のプロピオン酸はまた、ニューロンが身体の他の部分との通信に使うパスウェイを短縮し障害を及ぼす。減少したニューロンと障害されたパスウェイによって脳の通信能力は損なわれ、自閉症児にしばしばみられる行動障害を起こす。
これまでの研究では、自閉症と環境因子、遺伝因子の関係が提案されてきたが、ナーセル博士によれば、彼らの研究は、自閉症と、プロピオン酸の増加、グリア細胞の増殖、神経回路の障害との分子的な関連を見出した初めてのものであるという。
プロピオン酸は腸でも合成され、母親のマイクロバイオームは妊娠中に変化するので、それが原因でプロピオン酸濃度が高まる可能性はある。けれども、ナーセル博士によれば、問題は加工食品によってはるかに多い量のプロピオン酸が腸内に入ってきて、それが胎児に移行するのが問題だろう、ということだ。
「本研究は、最初のステップに過ぎない。だが我々は、自閉症の病態を解明するための正しい道筋を歩んでいることを信じている」とナーセル博士はコメントしている。
出典は『サイエンティフィックレポート』。 (論文要旨)
|