2019.6.20
, EurekAlert より:
クランベリーが抗生物質の効果を高めて少量でも充分に効くようにするだけでなく、細菌が薬剤耐性を持つのを阻止することを、カナダ・マギル大学の研究者らが動物実験で確認した。
薬剤耐性菌の世界的な拡大により、小さな感染症が致命的になりえた時代の状態へとじりじり戻りつつある現在、抗生物質の有効性の改善が極めて重要な課題となっている。
クランベリー・ジュースには俗に尿路感染症への有効性があるといわれているため、マギル大学のトゥフェンジ教授らの研究チームはクランベリーのエキスによって様々な細菌を処理し、クランベリーの分子特性について掘り下げることにした。実験に用いられたのは尿路感染症や肺炎、胃腸炎と関係する3種の細菌であった。
トゥフェンジ教授は「私たちが抗生物質とクランベリー・エキスとの両方で細菌を処理すると、耐性が一切生じませんでした。これには非常に驚いたとともに、重大な機会ととらえています」と述べている。
分析により、クランベリー・エキスは2つの働きによって抗生物質に対する細菌の感受性を高めてくれることが示された。まず1つは、細菌の細胞壁を抗生物質が透過しやすい状態にすること、2つ目には、細菌が抗生物質を排出するメカニズムを妨害してくれることだという。結果として、抗生物質はより容易に細菌内に浸透するうえ、排出には困難を要する。これが、低用量でも抗生物質が有効となる理由だ。
共同研究者のデジール教授は次のように話している。「本当に面白い結果です。この活性はプロアントシアニジンという物質によって引き起こされます。プロアントシアニジンにはいくつもの種類がありますが、今回の結果をもたらすにはそれらが協同したと考えられます。さらなる研究により、このうちどれが最も抗菌に大きな働きをもつのかを調べる必要があるでしょう」
細菌培養実験のあと、研究チームはさらに予備的な動物実験を行い、細菌に感染した昆虫においても、クランベリー・エキスと抗生物質の相乗効果を確認することができたという。さらなる研究を重ね、人畜ともに抗生物質の投与量を減らし、薬剤耐性と戦う一助になれば、などとトゥフェンジ教授は話している。
出典は『先端科学』。 (論文要旨)
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