2019.6.13
, EurekAlert より:
食べるときの姿勢は、味覚や温度知覚、食欲に大きな影響を及ぼすようだ。座って食べると美味しいものはよりおいしく、反対に立って食べると不味いものでもさほど気にならなくなる、などのことが明らかになった。米国・南フロリダ大学の研究。
夏になると、バーベキューやお祭りなどで屋外で立って食べるという機会も増えるだろう。しかし、もし食事を楽しみたいのであれば、席に座って食べるのが得策なようだ。
ビスワス博士らの研究チームは、平衡感覚と味覚の相互作用について詳細に調査を行った。すると、数分間の立ち姿勢が身体的ストレスを引き起こし、味蕾(舌などに存在する味覚センサー)の感受性を低下させることを発見した。立ち姿勢では、重力が血液を身体の下部に押しやることで、心臓をより活発に動かして血液を身体の上部に送り戻し、心拍数を上昇させる。このことが視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を活性化し、ストレスホルモン・コルチゾール濃度を上昇させる。この連鎖反応は知覚をにぶくすることから、飲食物の味や温度の感じ方や、摂取量に影響を与える。
350人を対象にした比較実験で、同じものを食べても立っていた人は、クッション入りの椅子に座って食べた人よりおいしく感じなくなることがわかった。さらに別の実験では、2種のブラウニー(通常の甘いもの、次に塩入りのもの)を順に食べてもらったところ、立って食べた人は塩入りブラウニーが気にならず、美味しいと判断した人が座って食べた人たちよりも多かったという。
ビスワス博士は「健康に良いけれどあまり美味しくない食べ物をお子さんに出すときは、立って食べさせれば(座って食べるよりも)気にならずに食べられるでしょう。まずい薬を飲ませるときにも同様に有効かもしれません」などとしている。
さらなる実験では、試食のフルーツスナックを食品スーパーまたはフードコートで客に渡し、反応を見た。すると、買い物袋を持っている人ほど美味しく感じなくなることがわかった。味の評価に対する姿勢の影響は、身体的ストレスによって強調される模様だ。
姿勢は温度知覚にも影響するようだ。同じ温度のコーヒーを飲んでもらうと、立って飲んだ人の方が熱さを感じにくいほか、飲む量が少ない傾向があった。身体的ストレスは食欲を抑えることが示唆され、長期的な減量目標に役立つかもしれないとのことだ。
出典は『消費者研究雑誌』。 (論文要旨)
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