2019.5.16
, EurekAlert より: 
牛乳に含まれるたんぱく質の一種・カゼインを配合したドリンクを寝る直前に飲むと、筋トレの効果が高まり、筋肉の量と強度を増大させるものの、体脂肪を増やすことはないのだという。オランダ・マーストリヒト大学のレビュー。
複数の先行研究において、若年成人が就寝前にたんぱく質を摂取すると筋たんぱく質の合成を増加することが示されている。
「このことから、就寝前のたんぱく質サプリメント摂取が一般的なレジスタンス運動(筋トレ)による筋力や筋肉量の増加を最大限にする可能性がある、という考え方が長きにわたって支持されてきたのです」と筆頭著者のスネイデルス准教授。
彼が2015年に発表した研究は、今に至るまで最も説得力のある論証だ。その研究では、若く健康な男性44人を対象に、12週間の重量挙げプログラムを実施した。被験者の半数は、就寝前にカゼイン30gと糖質15gを含むプロテイン・ドリンクを摂取し、もう半数はノンカロリーのドリンクを摂取した。トレーニングはいずれの群にも効果があり、最大挙上重量と大腿四頭筋が増大したが、プロテイン・ドリンク群の方が効果がより高かった。
しかしながら、その実験における筋肉の増大の要因は、就寝前のたんぱく質摂取によるものだったのか、単に一日の総摂取たんぱく質量とカロリーが高かったからなのか、は判別できない。この問いに答えるために行った実験では、重量挙げトレーニンを8週間行い、その期間中にプロテイン・ドリンクを朝または夜に飲んだ場合のどちらが、より徐脂肪体重を増加させるかを調べた。結果、夜にプロテイン・ドリンクを飲んだ群の方が増加量は多かったものの、被験者が少なかったったこともあり、統計的に有意な差は生じなかった。
とはいえ、就寝前のたんぱく質摂取が、若く健康な重量挙げ選手にとって有益であるとする間接的な指標はすでに多く存在する。睡眠は、筋肉の回復と発達にとって非常に重要な機会である。睡眠前のたんぱく質摂取は、一日を通しての摂取たんぱく質の分配を改善するために有用かもしれないという。
筋肉が発達したり、自らを修復するためには、たんぱく質由来のアミノ酸が血液中になければならない。しかし、血糖とは異なり、恒常的なレベルを維持するためにアミノ酸を貯蔵し放出したりはしない。
アスリート500人を対象とした調査から、1日3食併せてのたんぱく質摂取量は体重1kgあたり1.2g(体重60kgの人なら72g)だった一方で、夜食では1食でたった7gしか摂っていなかったという。結果的には就寝中に筋肉増大に利用できるアミノ酸が、より低いレベルでしか存在しなかったことになる。
しかしもし就寝前のたんぱく質摂取が、夜間に筋肉へアミノ酸を「詰め込む」のだとするなら、昼間のアミノ酸利用量はより少なくなるのだろうか?どうやらそれは違うらしい。
「たんぱく質の追加による筋肉増強の、各食事への影響は付加的なもののようです。ある研究では、夜、就寝前に大量のたんぱく質(ホエイ60g)を摂取しても、翌日の高たんぱく質の朝食に対する筋たんぱく質合成には影響がありませんでした。」
「また別の研究から、就寝前にプロテインサプリメントをとっても翌朝の食欲に支障がないことが示されています。これらのことから、総たんぱく質やカロリーの摂取量に悪影響はなさそうです」などとスネイデルス准教授は話している。
結論として、睡眠前のたんぱく質摂取は、睡眠中の筋たんぱく質合成速度を増加させるために効果的であり、筋トレに対する骨格筋の適応反応をサポートしてくれるといえる、とのことだ。
出典は『栄養学の最前線』。 (論文要旨)
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