2019.5.8
, EurekAlert より:
病院において効果的に脱感作を導ける報告はあるものの、ピーナツアレルギーの経口免疫療法は、アレルギー反応とアナフィラキシーを、忌避またはプラセボの場合に比べて、相当程度増やすようだ。カナダ・マクマスター大学からの研究報告。『ランセット』誌に発表された。
1,000人以上の患者を、アレルゲン忌避もしくはプラセボと比較して、1年追跡調査した12件の研究の系統的レビューによって、現在の経口免疫療法は、アナフィラキシーその他のアレルギー反応を、予防するよりも、大きく増加させることが明らかになった。
研究チームは、1,041名の患者を含む米国、英国、欧州、豪州からの12件のランダム化対照臨床試験の結果(3件の未出版を含む)を合成して、経口免疫療法と非経口免疫療法のアウトカムを比較した。非経口免疫療法にはプラセボ、アレルゲン忌避、その他のタイプの免疫療法が含まれており、また試験によって異なる製品と量のピーナツが用いられていた。
参加者の平均年齢は9歳(範囲は5-12歳)で、平均1年間追跡調査が行われていた。9件の試験ではアナフィラキシーが報告されており、10件でアレルギー反応などの有害事象、9件でエピネフリンの使用、3件で生活の質が報告されていた。
レビューの結果、高から中程度の質のエビデンスによって、経口免疫療法無しの場合に比べて、ピーナツ経口療法は、アナフィラキシーのリスクと頻度を(約3倍、免疫療法無しで7.1%に対して免疫療法ありで22.2%)増加させることが示唆された。また、エピネフリンの使用も増加した(無しの3.7%から有りの8.2%)。深刻な有害事象は無しの6.2%から有りの11.9%に増加した。アレルギー反応も増加した。
けれども、研究チームは治療を受けた患者の生活の質が、対照群に比べて改善されているわけでもないことを発見したという。チームによれば、これは観察研究の結果とは対照的であり、観察研究が交絡因子についてコントロールされていないか、バイアスが入り込んでいる可能性があるという。チームはまた、効果をハッキリさせるためには、大規模で良くデザインされたランダム化対照臨床試験が必要であると述べている。
研究チームでは本研究にはいくつかの制限が存在することを指摘している。利用可能なすべてのエビデンスを含んではいるものの、対象者の人数がすくなく、幾つかの研究ではチームの要請にも関わらず全てのデータが報告されなかった。より長期の経口免疫療法あるいは対象が成人の場合に異なる有効性・安全性が観察されるかどうかは将来の研究が必要である。
出典は『ランセット』。 (論文要旨)
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