2019.4.9
, EurekAlert より:
ビタミンB12の欠乏は、複数の致命的な病原菌への感染リスクにつながることが初めて確認された。米国ライス大学による動物実験から。
この実験は、C.エレガンスと呼ばれる線虫を用いて行われた。体長1mmほどの非常に小さい生き物だが、遺伝子的には人間と約70%もが類似しており、多細胞生物の最小真核モデル生物として利用されている。C.エレガンスは人間と同じく、ビタミンB12を体内で合成できないため、食事からの摂取が必要となる。
今回の研究では、ビタミンB12の欠乏した食事が、細胞レベルではいかにしてC.エレガンスの健康を阻害し、また分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝能力を低下させるかが明らかにされた。BCAAの分解能力の低下によって、部分的に分解されたBCAAの副産物がミトコンドリアの健全性を損ない、毒性の増強につながることが示されたのだ。
C.エレガンスの餌としては大腸菌がよく用いられるが、ビタミンB12を多くもたらす大腸菌を与えた場合と、それに比べてビタミンB12がはるかに少ない大腸菌を与えた場合とでは、ストレス耐性に劇的な違いが生じることが明らかになった。ここでいうストレスとは、たとえば熱やフリーラジカル、そして病原菌だ。今回は、致命的な院内感染菌などとして知られる緑膿菌やフェカーリス菌への感染を、充分なビタミンB12を含む餌によって防げることがわかったという。
ビタミンB12の欠乏がミトコンドリアを損傷するということは、逆手にとれば、がん細胞のミトコンドリアを損傷させられる可能性にもつながることから、新たな研究目標が生まれた、と研究者は話している。
出典は『プロス遺伝学』。 (論文要旨)
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