2019.3.20
, EurekAlert より:
食事によるヒトのかみ合わせの変化が、「f」のような新しい発音を世界中の言語にもたらしたようだ、という瑞チューリッヒ大学などによる国際共同研究。ヒトの発音の範囲は歴史を通じて変わっていないという現行の仮説に反するものであるという。
ヒトの言語に含まれる発音には、どの言語にも含まれる「m」や「a」のような一般的なものから、南アフリカの幾つかの言語にみられる稀な吸着音まで、驚くべき多様性がある。一般にはこの発音の範囲は、30万年前にホモサピエンスが出現した時に確立されたと考えられている。
今回の研究は、言語の進化に新たな光を当てるものである。その中で、研究チームは、「f」や「v」のような多くの現代語に普遍的に含まれる発音が比較的最近になってから、噛み合わせに対して食事が及ぼした変化によって出現したことを示した。
ヒトの歯は、硬い食べ物を噛みきるために上と下の歯がカッチリ噛み合うようにできているが、より柔らかい食べ物を食べるようになった結果、幼児の過蓋咬合をずっと保持するようになった。これは上の歯が下の歯よりもわずかに前に出ていることから、世界の半分の地域でみられる唇歯音という新しい発音を生んだ。これは「f」のように、上の歯が下唇に触れて出る音である。
「欧州では、我々のデータはこの唇歯音が、碾臼など食品加工技術が進歩した過去2千年ほどの間に急激に増加したことを示唆している」と共筆頭著者のひとちであるスティーブン・モーランは語っている。「発音の発達に及ぼす生物学的な条件の影響は過小評価されてきた。」
出典は『サイエンス』。 (論文要旨)
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