2019.3.13
, EurekAlert より:
新生児が生後1週間に経験する膨大な分子経路の変化をビッグデータを駆使して解析した、という米国ボストン小児病院などからの国際共同研究報告。
生まれたての最初の1週間、赤ちゃんは外界に適応しようと急激な生物学的変化を経験する。新たな細菌やウイルスに突然さらされる。この期間の変化は、意外なことにほとんどなにもわかっていなかったという。研究チームは、この新生児の血液がもたらすビッグデータを解析して、その詳細に迫ったという。
『ネイチャーコミュニケーション』誌に発表されたこの研究は、生後1週間に起きる遺伝子の活性化やたんぱく質の合成、代謝変化などの様々な分子変化を明らかにし、正常な発育で起きる全過程を基礎づけて今後の研究に役立てようとするものである。特に、新生児に対するワクチンの影響に主眼が当てられているという。
これまでは、小さな新生児から必要な血液検体を得るのが困難であることから研究が制限されてきたという。研究チームは、この課題を新たな技術で克服したという。洗練されたソフトウェアを用いて、小さじ2分の1杯の血液から得られた複雑なデータを解析した結果、1週間の間に起きる、インターフェロンや好中球、補体系等の免疫系の構成成分の変化や遺伝子発現の変化など何千もの変化を発見した。
研究チームは、西アフリカのガンビアの新生児グループをまず対象にした。次にバリデーションのために豪州の新生児を対象にした。ふたつの独立したコホートは、共通の高度にダイナミックな発達過程を示した。この結果は、こうした変化がランダムに起こるのではなく、段階的な発達の一部として起こっていることを示唆している。
本研究は、新生児期の健康と疾患についてのベースラインの情報を持たし、それは医療介入や食事などに対する反応を測定するときの助けになるだろう。研究チームは特に予防接種の影響に興味を持っているという。新生児の予防接種に対する反応は、高齢者のそれとは異なっており、新生児のワクチンを最適化するためにはまだもっと多くを学ぶ必要があるという。
「現在、大部分のワクチンは、試行錯誤で作られている」と研究者は述べている。「我々は、新生児におけるワクチンの機能を分子レベルで詳細に解析することで、将来より良いワクチンを開発することができるだろう。」
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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