2019.3.7
, EurekAlert より:
「味わう(saboring)」という言葉は食の文脈で頻繁に使われるが、我々は見事な夕焼けのような印象的な経験を「味わう」こともできる。会話を味わうこともできるようだ、と米国アリゾナ大学の研究チームは報告している。
「味わう」とは、主に感覚的な経験をスローダウンさせることであるという。
マギー・ピッツ准教授らの研究チームは、ヒトのコミュニケーションに関連した「味わう」経験について検討した。平均年齢22歳の65名を対象に、彼らがコミュニケーションを「味わった」経験について報告してもらった。
その結果、研究チームは、人々が、7種類のコミュニケーションを「味わう」ことを発見したという。
1)審美的コミュニケーション 参加者はこのタイプのコミュニケーションを、それが現前したタイミング、由来、言葉の選択(ひねりの効いた語句)の故に味わう。印象的なスピーチ、うまい洒落、サスペンスに満ちた告知などがこのカテゴリに入る。
2)コミュニケーションの存在 対象者が相手と深く関わりそこに没入し、他のすべてがどうでもよいことだと感じるような会話がこのカテゴリに含まれる。
3)非言語的コミュニケーション ジェスチャー、顔の表情、身体的接触といった非言語的な手掛かりのこと。深い意味をもつハグ、微笑みはこのカテゴリに含まれる。
4)認識と感謝 対象者が公の場で感謝するような場合がこのカテゴリに含まれる。受賞講演や顕彰されたときのスピーチなど。
5)関係性コミュニケーション お互いの関係を深く認識した瞬間のコミュニケーション。恋人たちが二人の将来を話す時、二人の関係が親しみをこめて開示されるときなど。
6)特別なコミュニケーション 多くの参加者が、結婚式、病気、子供の誕生のような記憶に残る特別な瞬間のコミュニケーションを味わっていた。
7)暗黙のうちに共有されたコミュニケーション はっきりと言葉にすることが困難で、話されなかったコミュニケーションの経験。周囲の群衆が興奮した状況、あるいは誰かをみて、本能的に相手の感情を共有するような場合がこれにあたる。
「味わうことは、延長され拡張され持続する肯定的または喜びの感情である」とピッツ准教授は言う。「最初、あなたは喜ばしい何かを感じる。それからあなたは喜びを感じることについての喜びを感じる。それが味わいが出来する場所である。それはただ良いという感情ではない。それは良いと感じることに関して良いと感じることである。そしてその感情は捕捉することができるのだ。」
味わうことは、通常その場で感知されるが、遡及的および予測的に味わうことも可能であり、同様に有益であり得る、とピッツ准教授は述べている。
彼女の研究は、ポジティブ心理学の分野におけるエビデンスの上に構築されている。「味わう」ことは、人々が彼らの楽しめる人生経験を認識し感謝する能力であり、ウェルビーイング、人間関係、QOLの促進することに寄与できる。
出典は『言語と社会心理学雑誌』。 (論文要旨)
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