2019.3.1
, EurekAlert より:
10年以上にわたって欧州では年間死亡率の低下が続いているが、この傾向は2008年に始まった経済不況によっても止まらなかっただけでなく、経済不況中には、低下速度が高まりさえしたという。スペイン・バルセロナ国際健康研究所からの報告。
本研究の目的は、欧州における死亡率の推移パターンが循環的か反循環的かを確かめることにある。つまり死亡率の低下傾向は経済不況によって加速するのか減速するのかということである。
研究チームは、2000年から2010年までの死亡率とGDPの変動データを欧州15か国140地域について解析した。
統計解析の結果、不況の年の死亡率は低下が加速したことが示されただけでなく、死亡率の低下の傾向は、不況が酷かった地域で特に高まっていたことがわかったという。例えば、スペインでは、不況前は年2%の低下だったものが、不況により3%に上昇した。
研究チームは、経済不況と死亡率低下の加速の関係について幾つかの因子を挙げている。「マクロ経済不況の期間は、環境汚染が減り職場事故、交通事故も減る。これらが死亡率低下を加速した最もありそうな要因であろう。飲酒とタバコもまた不況の時期には減少する。座業と肥満も同様だ。その根底にあるメカニズムはハッキリしないが、幾つかの研究からは、別の因子、例えば職場ストレスのようなものの影響も指摘されている。健康的な習慣は仕事が忙しいとなかなか実現が難しいということもある」と筆頭研究者のジョアン・バレスターは語っている。
「もちろん、経済不況は寿命を延ばすための望ましい方法ではない」とバレスターは付け加えている。「我々に必要なことは、経済が活況のときにも、環境汚染がなく、事故が少なく、健康的な生活習慣をもてるような社会を作ることである。」
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
|