2019.2.28
, EurekAlert より:
高カロリーの料理やデザートを最初に選ぶことで、そのときの食事を総合的に見ると、かえって低カロリーで健康的なものとなる傾向がある、という何やら嬉しい研究結果が米国アリゾナ大学から報告された。ただしこの傾向は、注意力の必要な状況下ではみられないこともわかったという。
研究者らは大学のカフェテリアにおいて、学生や教職員(18-60歳、平均年齢32歳)を対象とした実験を行い、料理の並ぶレーンの最初または最後に健康的なデザート(新鮮な果物)・不健康なデザート(チーズケーキ)のいずれかを置いておいた。すると、利用客がはじめにチーズケーキを取った場合、そのあとに取る主菜や副菜のカロリー、また取った全ての料理の合計カロリーの両方が、はじめに果物を取った客のそれに比べて低くなる傾向のあることがわかった。
具体的には、低カロリーの主菜を選んだ客のうち、最初にチーズケーキを取っていた客の人数は、最初に果物を取った客の2倍だった。また、最初にチーズケーキを取った客の選んだ料理の合計カロリーは、果物を取った客よりも30%も少なかったという(合計カロリーにはデザート分も含む)。
しかし、このようなことが起こるのはデザートをレーンの「最初」に置いた場合だけだったという。
「甘いデザートを最初に選んだ人は、健康的な主菜や副菜を選ぶことで高カロリーなデザートの埋め合わせをしているものと思われます。健康的なデザートを選んだ人は、『身体に良い行動』をしたご褒美として、その先では高カロリーな料理に手を伸ばすのです」と筆頭著者のレイマン博士。
次に研究チームは、出前サイトを模した3つのオンライン実験を行った。するとここでも、カフェテリアでの実験と同様の結果が得られたのだが、ひとつだけ例外があり、被験者を注意力の必要な状況においた場合には、高カロリーなデザートを選んだあとに高カロリーな主菜・副菜を選択したのだという。
<オンライン実験1> 160人を対象に、最初に空腹の度合いを、次いで選択した料理をどの位食べられるかを訊ねることで、摂取カロリーを推定した。結果はカフェテリアでの実験と同様であり、最初に高カロリーのデザートを選んだ被験者が、その後に選択した料理との合計カロリーは、低カロリーのフルーツを最初に選んだ被験者よりも有意に少ない傾向があった。
<オンライン実験2> 180人を対象に、今度はデザートではなく主菜を最初に選んでもらった。すると、高カロリーの主菜を選んだ被験者はその後に低カロリーの副菜などを選んだため、総合的にみると、低カロリーの食事となった。
<オンライン実験3> 296人を対象に2群に分け、一方は料理の注文前に7桁の数字を暗記をしてもらうこととし、もう一方は2桁の数字とした。すると、2桁暗記群の注文パターンは先行実験と同様の結果を示したが、7桁暗記群では真逆となった。つまり、脳の処理能力に負荷のかかった状態では全体的により高カロリーの料理を選択しやすいということだ。
「最初に何の料理を選ぶかや心理状態が、食事全体の健康度に影響を与える可能性について、皆が知っておくべきでしょう」とレイマン博士は話している。
論文の全文は以下で読むことができます↓ https://www.apa.org/pubs/journals/releases/xap-xap0000210.pdf
出典は『実験心理学雑誌:応用』。 (論文要旨)
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