2019.2.15
, EurekAlert より:
米国ハーバード大学とマサチューセッツ総合病院の研究チームは、マウスの腸にある特殊な細胞が代謝を遅くし肥満、糖尿病、高血圧、動脈硬化に寄与するメカニズムを発見した。この知見は、ヒトのこれら代謝疾患の予防と治療のために重要な意味があるかもしれない、という。『ネイチャー』誌に発表された。
「この研究によって、我々は腸のセンサーと心血管疾患の間の繋がりを発見した。これは新しい治療法への道を切り開く可能性を秘めているものだ」と国立心臓、肺、血液研究所(NHLBI)のミシェル・オリーブ博士は語っている。
この細胞は、上皮内Tリンパ球(またはナチュラルIEL)と呼ばれるもので、それが存在しないとき、マウスの代謝が過剰運転になることを研究チームは発見した。
「マウスは代謝的に過活動状態になり、特に脂肪と砂糖が極端に多い食事を食べた時にそうだった。それは肥満、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、動脈硬化のような代謝疾患に抵抗することができた」と筆頭研究者のフィリップ・スウィルスキ准教授は語っている。
けれども、ナチュラルIELが存在するときは、代謝をスピードアップするインクレチンGLP-1の可用性を制限した。GLP-1が制限されることで、ナチュラルIELは、身体の代謝をスローダウンさせ、食事から得るエネルギーを保存するのである。
長い進化の過程において、このエネルギーの効率的な使い方は本質的な有利さをもっていた。食糧が無くなると生物はエネルギーを燃やすのではなく貯蔵にまわすことでより長く生きられるのである。
「現代は食糧が極めて豊富に存在するので、エネルギーを保存するメカニズムは裏目に出て不健康なアウトカムへと導くことになる」とスウィルスキ准教授は説明している。
スウィルスキらの研究は、心血管疾患の予防法に新しい光を当てるものである可能性があるという。最初のステップは、ナチュラルIELの数と種類を同定することであり、次に、IELの数が少ない個体は心血管疾患から保護されているかどうかを明らかにするのである。IELのブロックはリスクを低下させるだろうか?
「我々はIELの機能のより良い理解を必要としている」とスウィルスキ准教授はコメントしている。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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