2019.2.13
, EurekAlert より:
魚油に含まれるn-3系脂肪酸の摂取によって、流産・早産・死産・新生児死亡などの一因となる子宮感染症を予防できるかもしれないという。米国コロンビア大学の動物実験から。
米国では、10人に1人の赤ちゃんが正産期(胎児が十分に成熟していつ生まれても良い状態になる、妊娠37〜41週)の前に生まれている。早産の原因の10〜30%は、ごく一般的な口内細菌であるフソバクテリウム・ヌクレアタム(F. ヌクレアタム)が子宮に感染してしまうこととされている。
「この種の細菌はどこにでもいて、どの人の口の中にもいます。問題は、それが体のほかの部分に侵入してしまうことで起きるのです」と研究者のハン博士。
妊婦の胎盤はF. ヌクレアタム感染の危険が特に高くなる。妊娠中のホルモンの変化は、歯茎の炎症や出血を引き起こす可能性があり、実に妊婦の30〜100%に影響を及ぼすという。歯茎の出血は細菌が血流に侵入する入り口を作ることになる。循環器系に入ると、細菌は胎盤に移動してそこで炎症を起こし、時には流産や死産の引き金になるおそれがある。
ハン博士らは先行研究から、F. ヌクレアタムの感染による子宮の炎症が、望ましくない出産時期や胎児の状態と関連することを知っていたが、それらを防ぐために、F. ヌクレアタム感染が炎症を引き起こすメカニズムを確定させる必要があったという。
そこで、マウスを用いた実験を行い、F. ヌクレアタムが胎盤内の内皮細胞の炎症反応を引き起こし、早産につながることを発見した。
さらに、炎症反応は特定の免疫たんぱく質が母親の内皮細胞に存在するときにのみ、起こることもわかったという。このたんぱく質を欠損した妊娠中のマウスでは、胎仔の死亡は少なめになったことから、このたんぱく質が火種となった炎症が早産の重要な要因であることが示唆された。
F. ヌクレアタムによる胎盤内の炎症メカニズムが判明した後、研究チームは炎症を防ぐ方法を探るためさらなる実験を行った。ここで、妊婦が安全に使用できることを条件に彼らが検討したのは、n-3系脂肪酸だった。n-3系脂肪酸は、慢性炎症性疾患の炎症を軽減するために広く用いられているほか、胎児の発育に良いとして、摂取が推奨されていたためだ。
結果、n-3系脂肪酸は細胞実験において、F. ヌクレアタムが誘発する内皮炎症を抑制することがわかった。またマウスを用いた実験では、胎盤の炎症とF. ヌクレアタムの増殖を抑制し、早産、流産、死産、新生児死亡を減らすことが示されたという。
出典は『JCIインサイト』。 (論文要旨)
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