2019.2.6
, EurekAlert より:
低強度運動をはさんだ間欠的な高強度の運動(高強度インターバルトレーニング)は時間をかけずに多くのカロリーを消費できることから、効率的かつ効果的な運動方法であると考えられている。
フロリダ大西洋大学の研究者によると高強度インターバルトレーニングが短時間の脂肪燃焼以外にも健康上の効果があることがわかった。これは肥満の人に起こる認知機能障害防止の効果的な方法となりうる。
肥満は脳由来神経栄養因子(BDNF) と呼ばれる物質を減少させる。これは脳内のたんぱく質で、神経細胞やニューロンの活動を助けるものだ。このたんぱく質の濃度の低下は、アルツハイマー病や、パーキンソン病、そして肥満と関連している。先行研究では、肥満が認知機能障害の危険因子であると示されているものの、そのメカニズムはよくわかっていない。またこれまで、肥満者を対象とした運動によるBDNFの反応を調べた研究では、回復時間を挟まない持続的な中強度運動の例しかなかった。今回の研究は、運動が誘発したBDNFの分泌が肥満にどう影響するかや、高強度インターバルトレーニングによる肥満者・普通体重の者、両方のBDNF分泌を測定する初めてのものだ。
本研究では12人の男性(6人は肥満、他6人は普通体重)に対して、高強度インターバルトレーニングと休憩をはさまない中強度の運動の両方を実施し、比較した。結果は普通体重の人と比べて、肥満者の間では中等度強度の運動よりも高強度のインターバル運動の方が、BDNFの反応が大きかった。また、血漿中の乳酸とストレスホルモンであるコルチゾール濃度を測定したところ、高強度インターバルトレーニングをした時の方が中強度運動の時よりもいずれも濃度が高かった。なお、肥満者は普通体重の者よりも乳酸濃度は低めだったが、コルチゾールについては両群の差はなかった。これらの結果から、高強度インターバルトレーニングは肥満者において、乳酸とコルチゾール濃度の上昇に関わらずBDNFの分泌を向上させる有効なプロトコルとなることが示唆された。
フロリダ大西洋大学のフィルフアン助教授によると、「脳の健康状態を左右するものの、肥満者では低下するとされる因子の分泌を促進するためには、高強度インターバルトレーニングは生理的利点が同等またはそれ以上の時間的効率の良い戦略です」とのことだ。
今回行った高強度インターバルトレーニングでは、まず5分間の歩行かジョギングによるウォーミングアップを行った後、4分間の高強度運動(VO2maxの80-90%)を4回行い、各回の間には3分間、アクティブリカバリーと呼ばれる低強度の運動(VO2maxの50-60%)を行った。被験者の血液サンプルは運動の前と直後に採取した。
共同研究者のホワン氏は「コルチゾール濃度の上昇はBDNFの分泌を抑制してしまうとされてきましたが、運動に対する今回の反応(コルチゾール濃度が上昇したのにもかかわらずBDNFの分泌が向上した)との関係はわからないままです」と話している。
出典は『実験生物学と医学』。 (論文要旨)
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