2019.2.5
, EurekAlert より:
人が座ったり、寝たり、体を動かしている時間は遺伝子の一部によって決められているという。英国オックスフォード大学の研究。
今回の研究は、この分野でも最も詳細なものだという。研究者らは、世界最大のバイオバンクである、英国のUK-バイオバンクの参加者のうち、一週間にわたって腕に活動量計を装着したことのある91,105人分の身体活動データを調べた。
調査では膨大な量のモニターデータから機械学習を通じて自動的に、個々人が動いていたか、座っていたのかを識別した。そしてこのデータとUK−バイオバンクの遺伝情報を統合し、身体活動に関わる14の遺伝子領域を明らかにした。なお、うち7つは新規の領域であった。
今回の研究により、睡眠や身体活動と、それらが健康にどう影響するかを理解するためのより良い道筋がつけられた。さらなる遺伝子解析により、身体活動の増加が血圧を低下させる理由が初めて明らかにされるだろう。運動不足は世界中で健康上の脅威となっており、肥満や糖尿病、心疾患といった病気の発症につながる。また睡眠時間の変化は、心臓・代謝・精神疾患と関連している。遺伝子解析でも、神経変性疾患・精神衛生・幸福と脳の構造には共通点があることが明らかにされ、中枢神経系が身体活動と睡眠に重要な役割を持つことを示している。
今回の研究を主導する、オックスフォード大学ビッグデータ研究所のドハーティ教授は次のように話す。「もちろん体がなぜ、どのように動くかということがすべて遺伝によって決まっている訳ではありませんが、遺伝子の役割を知ることは、運動不足の原因やそれによる影響への理解に役立つでしょう。」
「UK−バイオバンクから提供されるこれほど膨大なデータがあってこそ、このような研究をすることができます。それによって私たちは人間の最も基本的な動作である動くことや休むこと、寝ることに関して複雑な遺伝的基盤を理解することが可能なのです。」
共同研究者のカール教授によると、巨大な健康管理データセットにおける機械学習の利用は急速に進んでおり、今後の研究の分類に多大な影響を及ぼすという。身体活動のような複雑な機能を解析する方法を機械に学習させるために、学習モデルの開発には慎重を期したとのことだ。
具体的には、機械学習モデルの精度を高めるために、研究者らは200人のボランティアを募り、2日間に渡って20秒ごとに活動を記録できる特殊なカメラと活動量計を装着してもらった。それにより、撮影した画像と活動量計の記録とを比較して、データの解釈に用いたのだという。
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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