2019.2.4
, EurekAlert より:
腸幹細胞ががん化するのを防ぐのに使われる防御メカニズムを発見した、という独シャリテ(ベルリン医科大学病院)からの研究報告。
研究チームは、身体の先天的な免疫システムが中心的な役割を果たしていることを発見した。純粋な防御機能の他にも、免疫系は健康な身体を維持するために決定的な役割を持っていることを証明した。『ネイチャー』誌に発表された。
腸の内側は、二つの世界が邂逅する場所である。腸の内壁は、微生物や食品、その消化物などさまざまな異物に出会う。腸の細胞は、微生物や食品から恩恵を受けるだけでなく、ネガティブな影響も受ける。そのひとつが細胞のDNA損傷であり、これが蓄積すると大腸がんが発症することになる。
がん化を防ぐために、細胞にはDNA損傷を修復する能力が備わっている。しかし損傷があまりに過大になって修復不可能になると、細胞はアポトーシスを起こす。これまで科学者は幹細胞がこの修復メカニズムを独立に惹起すると考えていた。
けれども、アンドレアス・ディーフェンバッハ教授ら研究チームは、異なる結論に達したという。免疫系が、障害を受けた幹細胞中でDNA修復メカニズムを促進する能力をもち、その結果大腸がんの進行を防ぐのである。
研究チームはモデルマウスを用いた実験で、自然免疫系の細胞が、腸内の外来性の毒性因子を認識することを証明した。免疫系の細胞が、キャベツなどに含まれる有害なある種のグルコシノレートを検出すると、インターロイキン-22を放出する。すると腸の上皮幹細胞がDNAの障害をより早期に検出しより速く修復する。
「免疫系が外因性毒性成分を検出するセンサーのように働く」とディーフェンバッハ教授は説明している。「このセンサーのスイッチを切ると、大腸がんの発生が有意に高まった。」
免疫学者にとって、この発見は、大腸がんに対する身体の防御システムのエビデンスであるだけでなく、免疫系の機能が従来考えられていたよりはるかに複雑なものであることのエビデンスでもあるという。
「免疫系は、身体の各臓器の正常な成長と機能の両方をモニターしている」とディーフェンバッハ教授は語っている。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
|