2019.1.30
, EurekAlert より:
肉に含まれる飽和脂肪は、心血管系疾患の発症リスクを高めるが、植物性食品と乳製品のそれは、リスクを低下させるかもしれない、というオランダ・ユトレヒト大学からの研究報告。
肉に豊富に含まれるパルミチン酸やステアリン酸など炭素鎖16以上の飽和脂肪酸を殆ど食べず、代わりに植物性たんぱく質を食べる人は、心筋梗塞の発症リスクが低下し、さらに乳製品に豊富に含まれる炭素数14以下の短鎖飽和脂肪酸を食べる人も心筋梗塞の発症リスクが低下するようだ。
「我々の、2か国の大規模集団の食事を長期に渡って解析した結果は、飽和脂肪酸の種類によって、心血管影響が異なることを示唆している」と筆頭研究者のイボンヌ・スルージ博士は語っている。
研究では、4-18の炭素鎖をもつ飽和脂肪酸の心筋梗塞の発症との関連が調べられた。データは、英国とデンマークの約75,000人で、13年間(デンマーク)と18年間(英国)の追跡期間中に3,500人近い心筋梗塞の発症が観察された。
「我々が発見したのは、長鎖飽和脂肪酸の摂取が相対的に少なく、植物性たんぱく質を代わりに食べる人は、低いリスクと関連しているということだった。これら飽和脂肪酸を炭水化物等の他のエネルギー源に置換しても、心筋梗塞の発症リスクに影響がみられなかった」と博士は語っている。食事は国民によってまた別の因子によって異なっているものの、最も頻度高く摂取された飽和脂肪酸は炭素数16のパルミチン酸であり、ついで炭素数18のステアリン酸だった。どちらも肉製品に豊富に含まれている。乳製品に豊富に含まれているより炭素鎖の短い飽和脂肪酸の摂取はより少なかったという。
飽和脂肪酸の豊富な食事が、「悪玉」LDL-コレステロールを上昇させ冠動脈疾患のリスクを高めることに関係することが報告された1960年代以降、食事ガイドラインでは飽和脂肪酸の広範囲での摂取の制限を推奨してきた。近年になって、確立したと思われていたエビデンスに疑問を挟むような結果が増えてきた。一致しない知見は、異なる種類の飽和脂肪酸に異なる効果がコレステロールや冠動脈疾患にある可能性を指摘した。今回の結果は、そうした仮説を裏付けるものであるとはいえ、スルージ博士らは食事ガイドラインの変更は注意深く行うべきだとしている。
「我々の結果は、飽和脂肪酸と心筋梗塞の見かけ上の関係を示唆するものでしかない。我々はこれらの脂肪酸が実際に心筋梗塞の発症に対して異なる原因となっているかどうかを知らない。それを知るためにはよりコントロールされた条件下で飽和脂肪酸の摂取が検証される必要がある」とスルージ博士は述べている。
出典は『国際心臓学雑誌』。 (論文要旨)
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