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[その他]  飲料メーカーが肥満科学政策に影響を及ぼす!?
2019.1.16 , EurekAlert より:   記事の難易度 3
  

ある飲料メーカー(Coca-Cola Company)が、その非営利団体とのコネクションを通じた、研究資金拠出、制度的関係、個別の影響が形成する複雑なネットワークによって、、中国の肥満科学・政策動向に実質的な影響を及ぼしており、その結果として政策は特定の業界の企業利益に沿ったものになっているのではないか、という米国ハーバード大学からの研究報告。

スーザン・グリーンハルらによって実施された本研究は、食品飲料メーカーが政策に影響を及ぼすための努力だけでなくその充分な影響を証明した初めての研究結果であるという。

「巨大製薬産業と巨大タバコ産業が科学・政策に密接に影響を及ぼしてきたという研究がこの数十年にわたって報告されてきたが、巨大食品産業と巨大飲料産業についての研究はやっと端緒についたところだ」とグリーンハルは述べている。「私はこの種のインパクト、特に一国全体の政策に対するそれ、について記述した他の研究をひとつも知らない。」

「私が中国の政策をレビューしたとき、私はそれらがCokeの使うのと極めて似通った言葉を使ってなされるのを見た」と彼女は続けている。「たとえば、彼らはエネルギーバランスと治療行為の一部としての身体活動、あるいはバランスのとれた食事と運動について語るが、彼らの政策はCokeの興味に非常に沿ったものであり、世界保健機関(WHO)によって推奨される政策からは外れているのだ。」

中国の政策を操る努力の核心には、とグリーンハルは言う、米国を拠点とする企業資本の非営利団体の国際生命科学研究所(ILSI)の存在がある。Coca-Cola副社長アレックス・マラスピナが1978年に設立して以来、ILSIは現在では世界中に17のブランチをもち、そのひとつが中国にある。

ILSI中国ブランチ(正式にはILSI-Focal Point in Chinaとして知られる)は1993年になるまで設立されなかったけれども、とグリーンハルは言う、その設立者チェン・チャンミンは、マラスピナが地域パートナーを探しに当地を訪問した1978年以来、米国組織と関係してきた。

設立者で後に中国CDCになる機関の初代長官だった栄養学者として、チェンは中国の保健省など公衆衛生セクターとの深い結びつきを、ILSI中国の設立後も保ってきた、とグリーンハルは言う、それが彼女の顕著な政策的影響が背景に隠されることを許したのである。

その影響がいかに中国の政策をシフトさせたかを理解するための努力の中で、グリーンハルは1999年から2015年までのILSI中国ニューズレターのアーカイブに着目した。そこには組織の研究資金拠出から政策立案のためのカンファレンスの開催にいたる科学政策活動のほぼすべての詳細が書かれていた。

その仕事の最も初期の段階は、ILSIグローバルがブランチに彼らの検討課題のひとつとして肥満を追加した1999年に始まった、と研究者らは述べている。

1999年から2003年にかけてのILSI中国の仕事の約半分は、測定に関することだった。組織は中国に特異的なBMIの閾値を作り出した。そして少なくとも栄養におけるいくつかの予防努力に進歩はあったものの、身体活動にはまったく重点が置かれなかったという。

けれども、2004年に変化が始まった。

その時以来、Cokeは、自身を「健康的で活動的な生活習慣」の唱道者と位置付け、全食品飲料が(肥満を避けるための)健康的な食事の一部でありうるというメッセージを促進し始めた。身体活動が鍵となったのである。

この変化は殆ど直ちにILSI中国の活動に反映したことをグリーンハルは発見したという。2004年から2009年の間に、ILSI中国がスポンサーあるいは共同スポンサーになった肥満活動の3分の1が身体活動に焦点を当てていた。2010年から2015年には、その割合は倍近く増えたが、栄養に焦点を当てた肥満活動は5分の1に低下した。

組織は多くの肥満研究に関するカンファレンスを主催しているが、ニューズレターで詳細をみると、大部分の会合はILSIまたは企業に結びついた専門家で占められていた、とグリーンハルは述べている。中には、議論のスペースが企業展示のすぐ脇であることさえあった。

同じシフトは、ILSIのニューズレターに掲載されるニュースストーリーにも反映された、とグリーンハルは述べている。2003年より以前には、グループは活動が肥満と闘うことができることを示唆するストーリーはひとつも出版していなかった。けれども、2010年から2015年の間には、記事の60%がそのアイデアを背景にしたもので、食事に焦点を当てたものは4分の1にも満たなかった。

2015年のニューヨークタイムスによる一連の重要な調査報告書の後で、Cokeは、身体活動の科学の積極的なプロモーションを引っ込めた。けれども、その影響は、中国では継続しているようだという。それはILSIの組織の構造がそのまま残っており、それが支援する活動プログラムが充分に確立されているためであるという。

多くの科学者が彼女の結果は企業バイアスの明白なエビデンスとみているけれども、2ダース以上の肥満および公衆衛生の専門家との詳細なインタビューの結果、グリーンハルは大部分の中国の科学者がこの懸念を取るに足りないものとみなしていることを発見した。

「巨大な多数派は、利害の衝突はないと述べている」と彼女は述べている。「ほんの一握りのものだけが企業の科学への出資はなんであれ不可避的にバイアスをもたらすと信じているが、本当に少数派であって、彼らの大部分が成り行きを恐れて名前を出さないように私に要請した。なぜなら中国の政治風土は極めてビジネス・フレンドリーで親西洋的であるからだ。」

「西洋科学と特に米国科学は世界中でベストと考えられており、これらの企業は科学的にも技術的にも最先端のものを提示していると思われている」と彼女は言う。「そう感じているのに、なんでCoca-Colaを愛さないわけがあるだろうか?」

究極的に、とグリーンハルは言う、ILSIが、結果的にはCokeが、中国の肥満政策をこんなにも効果的にリダイレクトすることができた理由のひとつには、研究を指揮したのが彼らだけだったことがある。

「この物語の本質は、政府が慢性疾患に注意をしてこなかったこと、でもILSIは注意してきた、なぜならそれらの企業はその課題を推し進めていたから、というところにある」と彼女は述べている。「事実は、ILSI中国は肥満に対する興味と出資をもつほとんど唯一の存在であり、それは企業が出資したからで、Cokeは可能な限り早期に公衆衛生問題に解決策を得ることを望んでいた。」

身体活動による解決というのは、とグリーンハルは言う、肥満と戦うための現在の主流の研究動向に逆らうものであるのか?

「過去において、少数の研究者が肥満の蔓延は実際のところ不活動の蔓延の結果だと考えていた」と彼女は述べている。「けれども今日では、慢性疾患の分野で、そう考える人々は極めて少なくなっている。肥満を減らすためには、アクティブでなければいけないが、食事のほうがより重要だと認識する人々が増加している。」

今後、ILSIの影響を世界的に検証することが希望であり、現在はさらに中国の組織についてより詳細を書籍化しているところである、とグリーンハルは述べている。

出典は『英国医学雑誌(BMJ)』。 (論文要旨)      
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