2019.1.15
, EurekAlert より:
多くの援助、援助プログラムの存在、子供らの栄養レベルを安定的に保持しようという救済努力が、地震災害後の小児栄養不良の危機を救った、という米国ジョンズホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生学校からの研究報告。
ネパールで2015年に発生した大地震では、農業資源の重大な損失を含む広範囲の破壊にもかかわらず、最も被害のひどかった地域でも子供たちの栄養状態が安定に保たれたことを研究チームは発見した。被災1年後の時点で、小児栄養不良の指標は改善されたか安定に維持されていたことを示したという。同じ期間に家庭の食糧不足も有意に低下した。
2015年のネパール地震はインフラや経済生産に710万ドル以上の損失をもたらし、9,000人近い死者と22,000人近いけが人を出した。食糧生産と輸送体制の深刻な損失から小児栄養不良の悪化が懸念された。これを防止すべく、実質的な人道援助がネパール政府、国連、各NGOによって実施された。
「我々の知見が呼び起こす疑問は、地震後1年でこれら地域においてもたらされた栄養と食糧不足の改善が、豊富な援助のためか、既にこの地域にあった進行中の栄養・農業プログラムのためか、それともこの地域の共同体の回復力のためなのか、ということである」と筆頭研究者のアンドリュー・ソーン=ライマン博士は語っている。「最も重要なことは、複数の指標によって、栄養危機が回避されたことが確認されたことだ。」
研究チームは、ネパールで最も被害の大きかった地域の2014年と2016年のデータを解析した。データには900件以上の家庭と約2,000組の母子が含まれていた。
その結果、小児の衰弱(体重、除脂肪体重の低下)は、当該地域で4.5%から2.1%へと有意に低下したことが明らかになった。小児の衰弱は、災害後の栄養状態を評価するのにしばしば使われる痩せの指標である。衰弱の兆候を示す子供たちはまた、死亡リスクが高まる。研究チームは、小児の成長阻害(年齢に比して身長が極端に低い)が、23.1%から21.6%へと低下したことも発見した。ただしこれは有意ではなかった。
当該地域の食糧不足は、2014年から2016年に17.6%から12.4%へと有意に低下した。
インタビューの前年に、家族の死や家の大規模な損壊、家畜や農作物の損失があったかどうかを尋ねたところ、2014年に比べて2016年には自身の影響で失われたものが多かった。2014年には家屋の損壊は2%未満だったが、2016年にはほぼ半数まで上昇した。家畜や農作物の損失は2016年には2014年の2倍になった。
「とりあえず子供たちの栄養状態は悪化しなかったようだが、我々のデータからは明らかに地震が深刻なダメージとトラウマをもたらしたことがわかる。1年後では多くがまだ生活を再建中であった」と主任研究者のキース・ウェスト教授はコメントしている。
本研究のデータは、ネパール政府が定期的に実施している国民調査の一部である。
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出典は『プロスワン』。 (論文要旨)
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