2019.1.8
, EurekAlert より:
ヒト母乳中の糖と微生物の複雑な相互作用が、新生児のロタウイルス感染に影響を及ぼすようだ、という米国ベイラー医科大学などによる研究報告。
本研究は、新生児のロタウイルス感染に新たな理解をもたらすものであり、母乳の構成成分が、弱毒化ロタウイルスワクチンとして作用する可能性を示唆するものであるという。
「ロタウイルス感染は主として5歳未満の子供の下痢と嘔吐の原因となるが、生後28日未満の新生児は別で、彼らは通常無症候である。けれども、いくつかの場所では新生児の感染は重度の消化器系症状と関連している。症状がある場合と無い場合の違いをもたらす因子についてはハッキリわかっているわけではない」と筆頭かつ責任著者のサシレクハ・ラマーニ助教授は語っている。「我々は数年前、特殊なロタウイルス株が無症候性感染と症候性感染の両方に関連していることを発見したことから、研究をスタートさせた。」
研究チームは最初、ウイルスの側から答えを探したがだめだったため、方向転換し、感染を阻害する母乳成分を探したところ、母乳中の特定の糖が、新生児のロタウイルス株の感染を増強する、という予期せぬ発見をした。
「我々はこの結果に驚いた」とラマーニは言う。「母乳はロタウイルス感染からの新生児の防御を促進することが知られており、母乳中の糖は他のロタウイルスの感染を低下させることができる。けれどもここで我々は、この特別なウイルス株には逆のことが起きることを発見した。」
研究チームは、フィールドに戻り、この実験の結果をコホートにおいて検証した。
「我々は、母乳中の同じ特殊な糖のいくつかが症候性の感染を起こした新生児の母親の母乳に存在していることを発見した」とラマーニは述べている。
加えて、研究チームは、母乳中の微生物と新生児の胃腸症状の間に関連があることを発見した。これは新たな疑問を呼び起こした。微生物はこの胃腸症状の違いにどのように関与しているのだろうか?
「最も我々の興味を引いたのは、これらの糖はまた、我々の研究で用いた新生児ウイルスに類似した、ロタウイルスの弱毒化生ワクチンの複製を増加させたことである」とラマーニは述べている。「促進されたウイルス複製はウイルスに対するより効果的な免疫反応をおこす可能性をもっている。これは乳児のよりよい保護につながる。これは我々が将来探求したいものである。というのはロタウイルスのワクチンの効果を改善する戦略を示唆するものだからである。」
「我々に最も重要なことのひとつは、これら予期せぬ知見は公衆衛生に強く結び付いているということだ」と共著者のメアリー・エステス教授は語っている。
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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