2019.1.4
, EurekAlert より:
高血圧患者にとって、運動は血圧降下薬並みに血圧を下げる可能性が示された。とくに持久力トレーニングと動的筋力トレーニングを組み合わせることで収縮期血圧の低下に期待できそうだという。英国ロンドン大学LSE校の研究。
高血圧(収縮期血圧140mmHg以上)の改善には、血圧降下薬の服用のほか運動も効果的といわれるが、どちらがより血圧を下げてくれるのだろうか。
これまでに、運動と血圧降下薬の効果を直接比較した臨床試験はないため、研究者らはそれぞれの効果について検討した試験を収集し、統合して解析することにした。
具体的には、運動については構造化された運動プログラムと血圧の関係についての臨床試験197件、血圧降下剤についての試験は194件を用いた。
構造化運動は次のように分類した。 (1)持久性トレーニング:ウォーキング、ジョギング、ランニング、サイクリング、水泳、高強度インターバルトレーニング (2)動的筋力トレーニング:ダンベルやケトルベルなどの筋力トレーニング (3)アイソメトリック運動:静的プッシュアップなど (4)持久性トレーニングと動的筋力トレーニングの組み合わせ
そして、3つの角度から分析をした。まずは全分類の血圧降下薬と全分類の運動の比較。そして、各種類の薬と各種類の運動の比較。さらに薬の用量の違いと運動強度の違いによる比較を行った。
その結果、構造化運動プログラムを受けている人々よりも血圧降下薬を服用した人々の方が血圧は低くなったことが示された。ただし、ここで注意すべきなのは、血圧降下剤の試験の対象者には必ず高血圧患者が含まれていたのに対し、運動プログラムの試験のうち高血圧患者が含まれていたのは1/4程度のみだったことだ。
そこで、対象を高血圧患者に限定して再解析したところ、運動はほとんど血圧降下薬と同程度の効果的が見出されたという。さらに運動の有効性は、高血圧の基準値:140 mmHgを超えて上がるほど高くなると分かったという。
研究者らはまた、「持久力トレーニングと動的レジスタンストレーニングを組み合わせることが[収縮期血圧]の低下に効果的であることも発見した。
なお、今回の結果は有望ではあるが「血圧降下薬を取りやめて運動療法に切り替えるほうが良い」といえるまでの確証が得られた訳ではない、と研究者らは忠告している。構造化された運動プログラムの試験は、血圧降下薬の試験に比べて少なく、小規模であったためだ。
「とはいえ、私たちの調査結果が、臨床医と患者さんとの間の、エビデンスに基づく話し合いに役立つことを願っています」と彼らは付け加えている。
出典は『英国スポーツ医学雑誌』。 (論文要旨)
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