2018.12.14
, EurekAlert より:
運動が糖代謝に良い影響を与えることは言うまでもないが、そのメカニズムにはある種のニューロンと深く結びついていることがわかった。またこのニューロンは代謝、特に糖代謝に関係しており、運動により活性化させると血糖値が下がるほか食欲を抑制してくれるという。米国テキサス大学ウエスタン医療センターの研究。
週末、ずっとダラダラ過ごすのは健康意識に重くのしかかるものがある。しかしそれが、少し運動をした後なのであれば、体形に影響することはないだろう。
テキサス大学ウエスタン医療センターの最新の研究で、マウスにおいて代謝に影響を及ぼすニューロンは、たった1回の運動で最高2日間活性化されることが示された。
この研究では、フィットネスにおける脳の潜在的な役割に対する新たな洞察をもたらすとともに、より長期的には、代謝を改善する治療法開発のターゲットを提供するかもしれない。
研究者のウイリアムス博士は「これらのニューロンの活動を変えるには、たくさんの運動は必要としません」と話し、今回の研究結果によれば、特に糖代謝に関して、外に出て強度の高くない運動を1回しただけでも、その恩恵は何日も続くのではないかとしている。
この研究では、短期・長期の運動が、視床下部のメラノコルチン系を構成する2種類のニューロンに及ぼす影響を評価した。これらはヒトとマウスに共通して存在するニューロンだ。
2種類のうちのひとつPOMCは活性化すると、食欲を減弱させ、血糖値を下げ、エネルギーの燃焼を高める。もうひとつのNPY/AgRPは活性化により、食欲を増し代謝を低下させる。
今回の実験では、マウス用トレッドミルを用いた単一の連続運動がPOMCニューロンの活性を高め、最大で2日間、NPY/AgRPニューロンを阻害できることが明らかになったという。また、運動を増やすほどその効果は持続したとのことだ。一例として、各20分・3種類のトレッドミル運動を行ったマウスでは、食欲の減少は6時間続いた。ほかにも長期的効果が、活性化されたときに糖代謝を改善するPOMCニューロンで見られた。これらのニューロンは、レプチン受容体と呼ばれるたんぱく質も発現すると、より長い間活性を維持することがわかった。
この発見により、メラノコルチン系に関する科学的な理解が深まった。先行研究では、メラノコルチン系が摂食または絶食によって変化することがわかっていたが、運動との関係は示されていなかった。
今回の研究結果は、糖尿病患者などに対する糖代謝改善のための治療にあらたな道を開くことにもなった。
出典は『分子代謝』。 (論文要旨)
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