2018.12.13
, EurekAlert より:
酪酸を産生する腸内細菌が食物繊維の健康効果を媒介しているようだ、という米国ウィスコンシン大学マディソン校からの研究報告。
食物繊維が豊富な食事は心臓の健康に良く、動脈欧化を予防し心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げることが視されてきたが、その具体的なメカニズムははっきりしていなかった。
有益な腸内細菌が食物繊維を消化して、心臓の健康に影響を及ぼすといわれているが、その関連には曖昧な部分が多かった。
研究チームは、マウスを用いた動物実験で、高食物繊維食の保護効果の背後にある特定の脂肪酸を同定した。それは酪酸であり、食物繊維を消化する特定の腸内細菌によって産生される。
酪酸産生菌ローゼブリアをもち高食物繊維食を摂取したマウスは、この細菌をもたないマウスに比べて、アテローム性動脈硬化と炎症が低下することが明らかになった。ローゼブリアをもっていても食物繊維の少ない食事をした場合には保護効果はみられなかった。
研究チームが、酪酸産生菌をもたないマウスに、除法性酪酸カプセルを投与したところ、動脈の脂肪プラークが3分の1に低下し、炎症および動脈硬化のマーカーが減少した。
先行研究で、心血管疾患を有する人は、ローゼブリアその他の酪酸産生菌のレベルが低いことが示唆されている。今回の研究は、食物繊維と細菌と健康の間の不思議なつながりの明確な原因を明らかにした研究のひとつであると研究チームは言う。
とはいえ、研究チームでは、この結果が、酪酸を新たなサプリメントとして心臓の健康のために使えることを意味するものではない、と警告している。依然として、通常の食事から摂る食物繊維が健康維持の理想的な方法であろう、という。
出典は『ネイチャー微生物学』。 (論文要旨)
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