2018.11.22
, EurekAlert より:
長期的な収入の変化を考慮に入れると、富裕層と貧困層の実際の平均寿命の差は、男性で2.4年、女性で2.2年で、先行研究の半分に過ぎないようだ、というデンマーク・コペンハーゲン大学の研究報告。
研究者らは、収入の多い人との少ない人の平均寿命には大きな違いがある、というこれまでの研究結果に挑戦している。人々はずっと貧乏だったりずっと金持ちだったりするわけではなく流動性があるので、それを考慮すると収入格差による寿命の差はそれほど大きなものではないようだ。
2016年に『米国医学会誌(JAMA)』にハーバード大学の研究チームは、米国で高収入の人は、低収入の人に比べて、40歳の時点で平均6.5年寿命が長いことが期待できると報告したが、これが論争を巻き起こした。
既存の方法では、貧しい人はずっと貧しく、豊かな人はずっと豊かであることが仮定されている。しかし実際には、10年以上の間には、最も貧しい人々の半数はより良い状態に変化し、また最も豊かな人々の半数はより悪い状態に変化する。これら経済階層を移動した人々の死亡率は移動しなかった人々とは有意に異なっている。
研究チームは、1983-2013年のデータを基に、デンマークで40歳の人の平均寿命を計算した。経済階層の移動を考慮した場合、富裕層の40歳の男性の寿命は77.6年であり、貧困層の寿命は75.2年という結果になった。その差は2.4年である。女性の場合も同様に、2.2年の差異がみられた。
けれども、経済階層の移動を考慮しない場合には、その差は男女とも約5年になったという。この方法で計算すると、米国の6.5年の違いも3年に短縮された。
とはいえ、デンマークのような福祉の充実した国でも、富裕層と貧困層の寿命の差は30年以上にわたって持続的に拡大してきているという。その差の原因については本研究の範囲を超えており不明であるが、富裕層は最新の医療技術の恩恵を受け易く、新しい種類の治療や予防をより有効に活用するからではないか、と研究チームは考察している。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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