2018.10.11
, EurekAlert より:
超低出生体重児は口から母乳などを摂取できない間、点滴やチューブなどで栄養を補給するが、この間、それぞれの栄養補給法による栄養摂取量を合算したデータを医師が迅速に把握し、摂取量を最大にできるようにする必要があるという。米国ノースウエスタン大学の研究。
低出生体重児の中でも最も小さく、出生体重が1,000g未満だった超低出生体重児は、口からの栄養摂取ができないため、まずは静脈への点滴によって水分や各種栄養素を補給する「静脈栄養」という方法を用いる。
数日〜数週間経過した時点で、乳児がミルクを吸ったり飲み込んだり出来なければ、消化管内にチューブを挿入して母乳、それが難しい場合は人工乳・または栄養剤を注入する「経腸栄養」へと移行する。
静脈栄養から経腸栄養への移行期間には両方を合わせて行い、段階的に静脈栄養の比率を減らし、経腸栄養の比率を増やしていくのだが、この間、たんぱく質の総摂取量が減少する傾向があり、成長の阻害が懸念される。
超低出生体重児の栄養摂取と成長を最大限にするために役立つよう、研究者らは移行期間における各栄養投与法の利益と損失を定量化した。具体的には、シカゴのリュリー小児病院のNICU(新生児集中治療室)に2011-2014年に入院した超低出生体重児のうち、生後1週間以内に入院し、生後1か月以降に退院しており、染色体異常や先天性奇形を持たない115人を対象とし、完全な静脈栄養(フェーズ1)から完全な経腸栄養(フェーズ5)にいたるまで、段階的にカロリーとたんぱく質摂取量の変化を算定した。
すると、フェーズ2(経腸栄養0-3割以下)からフェーズ3(経腸栄養3割-6割以下)に移行する際には、経腸栄養によるたんぱく質の摂取量が大幅に増えるが、牛乳成分によって栄養強化された母乳を早期より与えられていた乳児は、強化されていない母乳を与えられていた乳児に比べて静脈栄養によるたんぱく質摂取量が少ないことがわかった。同様の傾向はエネルギー摂取にもみられた。そのほかに、フェーズ3から4(経腸栄養6割-10割以下)へ移行する際にはたんぱく質摂取量が減少する傾向があることなどが明らかになった。
早期より栄養強化された母乳を経腸栄養で与えられていた低出生体重児は、かえってたんぱく質とエネルギーが少なめになってしまっていたのは、臨床医が各栄養投与法による栄養摂取量と全体的な栄養摂取量の関連を容易に知るためのデータが不足していることが原因である可能性が示唆された。
これらの所見に基づき、各フェーズ間のカロリーとたんぱく質摂取量を最大にするために明確なアプローチをすることを著者らは勧めている。
出典は『小児科学雑誌』。 (論文要旨)
|