2018.9.10
, EurekAlert より:
生涯を通じての平均的な移動速度は、瞬間的には最も速い動物とマシンが、実際には最も遅いようだ。米国デューク大学からの研究報告。
「ウサギとカメ」の寓話は、生涯のメタファーであり、レースの物語ではない」と主任研究者のエイドリアン・ベジャン教授は語っている。「我々は動物の生涯が厳密に二種類の異なるライフスタイルに分かれることを発見した。ひとつは、ほぼ決まった摂食習慣と済ン習慣を持つ動物で、別のひとつは、間欠的な摂食とそれ以外はほぼ一日中昼寝をして過ごす動物である。どちらもイソップが教える生き物の生活リズムである。」
寓話の中で、イソップは速いがすぐに気が散るウサギと遅いが粘り強いカメの話をしている。読者は、カメがウサギを打ち負かすのをみて驚かされる。そして「遅いが安定しているものが勝つ」という印象を植え付ける。ところが、べジャン教授の分析によればそうではないという。
教授によれば、世界最速と謳われる動物の幾つかは、生涯の平均移動速度を考えたとき、実際には最も遅い動物である。
教授はこの直観に反する結果が、現代航空機産業にも当てはまることを証明した。数百の歴史的飛行機のデータを解析して、べジャン教授は、航空機設計の一般的傾向が、サイズと速度を手に手を取り合って増大してきたことを示した。
例外はジェット戦闘機である。
動物の世界と同じように、ジェット戦闘機は瞬時に爆発的な速度で飛ぶが、ほとんどの時間を地上で過ごす。生涯の平均移動速度を考えると、ジェット戦闘機は、輸送機や偵察機に比べて驚くほど遅い。
本研究は、べジャンらのこれまでの研究のひとつの帰結であるという。彼らの構築した理論では、動物の速度は身体が大きくなるほど速くなるというものだった。
「私がこのテーマで講演すると、いつも誰かが、チータのような外れ値を反証として持ち出す」とべジャンは言う。「けれども、本研究が示しているのは、これら外れ値は予想されたものであり、彼らの生涯全体を考えると、結局動きの遅いいとことたいして違いはないことがわかるのである。」
出典は『サイエンティフィックレポート』。 (論文要旨)
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