2018.8.9
, EurekAlert より:
欧米型の食生活や、紫外線を浴びる機会の少なさによって、ビタミンD欠乏状態に陥る妊婦が北欧では3〜5割にも上るという。ビタミンD欠乏は妊婦・胎児の骨に深刻な影響を及ぼすだけでなく、早産、喘息のほか、胎児の生涯に渡って病気リスクとの関連が指摘されている。
ビタミンDは日光(紫外線)を浴びることで皮膚でも合成されるが、それゆえ高緯度地域など日照時間の少ない地域で特に欠乏が起こりやすい。現にノルウェーでは妊婦の1/3が妊娠後期にビタミンD欠乏状態になることが今年初めに報告されている。ノルウェーで日照時間が極端に少なくなる冬場には、ビタミンD欠乏の妊婦の割合は50%にまで上昇するという。
「(欧米型の食生活では)食材から十分なビタミンDを得ることは難しく、北部地帯では1年のうち6か月は、皮膚でのビタミンD合成のための日光が十分ではありません。夏には皮膚の保護とがん予防のために日焼け止めを身体に塗りますが、これも十分な量のビタミンD合成を難しくしている可能性があります」などと論文著者のグスタファソン氏。ビタミンDは妊婦と胎児にとってどのような働きを持つのか、まとめている。
<骨量に重要> ビタミンDレベルが低いと、妊婦・胎児両方の骨の健康に深刻な影響を及ぼすおそれがある。というのも、消化管によって吸収されるカルシウムのために必要不可欠なためだ。ビタミンDは胎児の骨量を高め、母親の骨量を維持する。一例として、ビタミンD欠乏状態の妊婦から産まれた子は、20歳になった時点での骨量が低い傾向にあったという。
<病気との関連> 低ビタミンDレベルによって、早産のリスクが高まるほか喘息リスク増加との関連があるという。また、妊婦の極端なビタミンD欠乏は、高血圧・子癇前症・妊娠性糖尿病のリスクを高めるという。
ノルウェーで妊婦に推奨されるビタミンD摂取量は1日あたり10μg(日本人の食事摂取基準2015年版では13.5μg)であるが、これを満たす妊婦はわずか18%に過ぎない。そのため、週2-3回魚を食べたり、サプリメントを利用する方法が考えられるが、ビタミンDは身体に蓄積される性質があるため、(サプリメントなどによる)過剰摂取には充分な注意が必要である。
<葉酸なみの周知を> グスタファソン氏は「妊娠中に葉酸サプリメントの服用をする女性は多くなっていますが、これは、胎児の脊髄奇形(神経管欠損)リスクの低下に有効という知識が普及したためです。しかしビタミンDの重要性についての知識が同レベルに達しているとは思いません」と話し、妊婦が情報を得られるようにするため、保健行政からの情報が妊婦に伝えられるだけでなく、妊婦に関わる医師や助産師など医療関係者にも周知されることが重要だとしている。
<赤ちゃんの生涯に渡る影響> 数年前にスウェーデンで行われた類似の先行研究においては、今回のグスタファソン氏の研究結果よりも、妊娠後期にビタミンDレベルの低い妊婦の割合がより高かったことが示されていた。
ビタミンDは、主に胎児の骨の正常な成長のために重要である。そのほか、ビタミンDのレベルが低いと、妊娠合併症、早産、喘息のリスクが増加するといわれているが、最近の研究では胎児の中高年期における心血管疾患や骨粗鬆症との関連が示唆されている。
出典は『プロスワン』。 (論文要旨)
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