2018.8.6
, EurekAlert より:
男性のテストステロン量は、小児期の生育環境によって大きく左右されることが最新の研究から明らかになったという。たとえば感染症の多発地域など、健康上厳しいところで育った男性は、健康的な環境で育った男性に比べ、その後の人生においてテストステロンの量が少なめであるという。英国ダラム大学の研究。
今回の結果は、これまでいわれてきた「テストステロンの量は遺伝や人種による」という説に反するものだ。
テストステロンの量が多いほど、前立腺肥大やがんのリスクが高まるおそれが指摘されているが、今後はスクリーニングの際に子ども時代の生育環境も考慮すべきかもしれない、とのことだ。
この研究では、次の5タイプの男性を比較した。(1)生まれた時から成人後もずっとバングラデシュに住む男性、(2)子ども時代に英国ロンドンに引っ越したバングラディシュ人男性、(3)成人してから英国に引っ越したバングラディッシュ人男性、(4)英国移住者の両親を持つ、在英バングラデシュ人2世、(5)英国で生まれたヨーロッパの少数民族。
分析の結果、英国で育ち成人したバングラデシュ人の男性は、生まれてからずっとバングラデシュに住んでいた比較的裕福な男性よりもテストステロン・レベルが有意に高く、早期に思春期を迎え、小児期により背が高かったことが明らかになった。テストステロン・レベルは民族や成人後の居住環境には関係がなく、子ども時代の環境に左右されるようだという。
この理由として、生育環境によってエネルギーの配分が異なるからではないか、と研究者は見ている。たとえば、感染症の多発や栄養不足があれば、男児は生存することにより多くのエネルギーを注ぎ、テストステロンの産生を犠牲にするということだ。
今回の研究によると、男性の性機能は思春期の間、最高19歳までは可変であるが、年齢が低いほど、より変化しやすいのだという。しかし成人後は、環境によって左右されることはまずないことが示唆された。
なお、共著者のベントレー氏は以前の研究で女児と生育環境についての調査をしており、この中で、成人後のホルモンレベルや受胎能力、生殖器のがんリスクのレベルとの関連を明らかにしている。
出典は『ネイチャー生態学&進化』。 (論文要旨)
|