2018.7.18
, EurekAlert より:
オメガ-3系脂肪酸の補給は、心臓病、脳卒中、死亡のリスクに対して、ほぼ効果がないようだ、という英国イーストアングリア大学からの系統的レビュー。
研究チームは、112,059名の対象者を含む79件のランダム化臨床試験をレビューした。これらの文献は、オメガ-3系脂肪酸の付加的な摂取が、通常もしくは少ないオメガ-3系脂肪酸の摂取と比較して、心臓や血管にどのような影響を及ぼすかを検討したものだった。うち25件の研究は、研究デザインと実施状況が良好で、高い信頼性をもつものだったという。
対象者は、北米、欧州、豪州、アジアの健康なあるいは何らかの疾病をもつ男女であった。ランダムにオメガ-3系脂肪酸を増やす群とそのままの群に振り分けられて最低1年間それを継続した。大部分の研究において、長鎖オメガ-3系脂肪酸(EPA、DHA)サプリメントのカプセルと対照のプラセボ(偽薬)の効果が比較されていた。普通の魚介類の摂取を見た研究はわずかだった。
データ解析の結果、長鎖オメガ-3系脂肪酸の摂取を増やすことには、効果がもしあるとしても極めて小さいものであることが明らかになった。研究チームは、長鎖オメガ-3系脂肪酸が、いかなる死因による死亡リスクに対しても、極めて小さいあるいは意味を持たない効果しかない、という高い確実性をもつエビデンスを発見した。オメガ-3系脂肪酸をより多く摂取した群の総死亡率は8.8%であったが、対照群の総死亡率は9%であった(相対リスク0.98)。
研究チームはまた、長鎖オメガ-3系脂肪酸の摂取を主としてサプリメントで増加させても、心血管系イベント、冠動脈疾患による死亡、冠動脈疾患イベント、脳卒中、不整脈の発症リスクは対照群と比べて極めて小さな違いあるいはなんの違いもないことを発見した。
長鎖オメガ-3系脂肪酸は、数種の血中脂質―中性脂肪、HDL-コレステロールを低下させた。中性脂肪の低下は心臓病に保護的に働くが、HDLが低下するのは逆の効果がある。研究チームは、有害事象についてもまとめたが、出血や血栓に関する情報は極めて限られていたという。
「本レビューは、オメガ-3系脂肪酸のサプリメントには、心臓の健康や、脳卒中予防、全ての死因による死亡に対して有益性がみられないという質の高いエビデンスを提供するものである。他方、脂の多い魚は健康的な食品と考えられているが、研究が少なくて明確な結論は引き出せなかった」と主任研究者のリー・フーパー博士はコメントしている。
出典は『コクラン・ライブラリー』。 (論文要旨)
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