2018.7.9
, EurekAlert より:
柑橘類の皮に含まれるd-リモネンは、頭頸部癌患者の放射線療法によって引き起こされる口渇を緩和するのに役立つ可能性がある、という米国スタンフォード大学からの研究報告。
頭頸部がんの放射線療法は、しばしば口の乾燥につながり、発声、嚥下、および生活の質に関連する他の機能に影響を及ぼす衰弱状態になる。放射線照射後の唾液機能回復は、生存している唾液幹/前駆細胞の数に大きく依存するため、唾液幹/前駆細胞を傷害から保護することは口渇を緩和する上で不可欠である考えられる。
放射線療法後には、毒性の高いアルデヒドが生成して細胞機能を破壊する。研究チームは、唾液幹/前駆細胞の再生法を検討しているときに、これらの細胞にはアルデヒド脱水素酵素3A1(ALDH3A1)が多く含まれていることを発見した。
ALDH3A1の活性を促進する化合物を135種の漢方成分からスクリーニングしたところ、7つの活性のある物質がみつかり、特にd-リモネンが有望と考えられたという。
研究チームは、放射線に曝露されたマウス細胞を用いた一連の実験において、d-リモネンが成人および唾液幹/前駆細胞のアルデヒド濃度を低下させることを示した。
放射線照射の数週間後に細胞を処理した場合でも、d-リモネンは、腺構造を修復し、唾液を生成する能力を改善した。d-リモネンを摂取し、放射線に曝露されたマウスも、d-リモネンを受けずに放射線に曝露されたマウスよりも多くの唾液を産生した。
研究チームはヒトを対象にした実験で、摂取したd-リモネンが唾液腺に移行することを証明し、治療への可能性を示した。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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