2018.7.5
, EurekAlert より:
高脂肪低炭水化物ケトジェニックダイエットのてんかん性発作抑制作用に本質的な役割を果たす特殊な腸内細菌を同定した、という米国カリフォルニア大学ロサンジェルス校からの研究報告。
本研究は、てんかん発作の起こし易さと腸内細菌の間の因果的な関連性を示唆する初めての報告であるという。
ケトジェニックダイエットには、抗てんかん薬に応答しない小児てんかん患者の発作を減らすなどのいくつもの健康効果がある、と主任研究者のエレーヌ・シャオ助教授は語っている。けれども、てんかん患者にこのダイエットが有効である厳密なメカニズムは明らかではなかったという。
研究チームは、ケトジェニックダイエットによって腸内細菌が変化することが、抗発作効果にとって重要なのではないかという仮説を立て、それを検証した。
マウスモデルを用いた動物実験の結果、研究チームは、このダイエットがわずか4日以内に腸内細菌叢を変化させ、有意に発作の回数を減少させることを発見した。
腸内細菌叢が発作を抑える上で重要であることを検証するために、研究チームは、細菌をもたない無菌マウスと抗生物質を投与して腸内細菌を死滅させたマウスを用いて実験を行った。
「どちらのマウスでも、ケトジェニックダイエットの発作抑制効果は観察されなかった」と筆頭研究者で大学院生のクリスチン・オルソンは語っている。「これが示唆するのは、腸内細菌が、このダイエットが発作低減効果を発揮するために必要だということだ。」
さらに研究チームは、ケトジェニックダイエットによって増える2種類の細菌をみつけたという。それはアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)とパラバクテロイデス属(Parabacteroides sp)であり、これが主要な保護効果の鍵であるようだ。
研究チームが、この2種類の細菌を、無菌マウスに植菌したところ、ケトジェニックダイエットの抗発作効果が再び観察されるようになったという。「いずれか一方の細菌だけでは保護効果は現れなかった。各々の細菌がユニークな機能を持っていて、それが両方ないと効果は現れないようだ」とオルソンは語っている。
さらに、腸、血液、脳の海馬(てんかん発作に重要な部位)周辺の数百種類の化合物を測定多結果、ケトジェニックダイエットによって増えた細菌は、腸、血液の化学物質のレベルを変え、それが海馬の神経伝達物質に影響を及ぼすことが明らかになった。
「これらの細菌は、脳を興奮させる神経伝達物質であるグルタミン酸よりも、脳を鎮める伝達物質であるGABAのレベルを上昇させる」と共同研究者のヘレン・ヴォン博士は語っている。
出典は『細胞』。 (論文要旨)
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