2018.7.5
, EurekAlert より:
インスリンを作り出す膵臓のβ細胞は、ビタミンDによって保護される効果を増強する化合物を発見した、という米国ソーク研究所からの研究報告。
研究チームは、細胞レベルおよびマウスを用いた動物モデルにおいて、損傷を受けたβ細胞の治療にビタミンDが有効作用することを発見した。また、がんなど他の疾患の治療を開発するのに応用できる遺伝子制御についての新たな洞察を得ることができたという。
「我々は糖尿病が炎症によって起こる疾患であることを知っている」と主任研究者のロナルド・エヴァンスは語っている。「この研究で、我々はビタミンD受容体が、炎症とβ細胞の生き残りの双方に重要なモジュレータ―であることを同定した。」
研究チームは、胚性幹細胞(ES細胞)から調製したβ細胞を用いて、β細胞の生き残りを改善するためにビタミンDとビタミンD受容体が結合されたときに、ビタミンD受容体の活性化を促進するようにみえるiBRD9という化合物を同定した。これは、培養皿上でのβ細胞の生き残りの改善効果について多数の化合物をスクリーニングするこで成し遂げ得られた。
次にこの組み合わせを糖尿病のマウスモデルを用いて検証し、動物の血糖値を正常レベルに戻すことが可能であることを示した。
「本研究は、β細胞におけるビタミンDの役割を見つけることから始まった」と筆頭研究者のゾン・ウェイ助教は語っている。「患者を対象にした疫学研究は、血中高ビタミンD濃度と糖尿病リスクが低いことの間に関連があることを示唆しているが、そのメカニズムは良く理解されていない。ビタミンだけではβ細胞を保護することは困難であった。我々は今やこの関連を応用して先に進めるいくつかのアイデアを手にしたといえる。」
根底にあるプロセスは転写によって行われる。つまり遺伝子がたんぱく質に翻訳される過程である。新しい化合物をビタミンDと結合させるとある種の保護的遺伝子が通常の病的細胞に比べてかなり高度に発現される。
「ビタミンD受容体の活性化は、ストレス下に置かれた細胞が生き残るのを助ける遺伝子の抗炎症機能の引き金になるのだろう」と共同研究者のマイケル・ダウンズは語っている。「我々が開発したスクリーニングシステムを使って、我々はビタミンD経路を超活性化するパズルの重要な一片を同定することができた。」
「この研究で、我々は糖尿病についてみたが、これはビタミンDの効果を増強する必要があるところではどこでも重要となる潜在的な可能性のある重要な受容体である」と別の共同研究者のルース・ユーは語っている。「例えば、我々はすい臓がんにおける関与に興味を持っている。」
出典は『細胞』。 (論文要旨)
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