2018.6.20
, EurekAlert より:
信頼性の高い研究結果を得るにはより大きな集団を対象にしなければいけない、と医学研究者らは長い間考えてきたが、米国カリフォルニア大学の研究チームは、場合によってはそれが著しく的外れのこともあるようだ、と主張している。
というのも、ヒトの感情、行動、生理は個体ごとにまた瞬間ごとに顕著な違いがあるからだ。大集団から平均化されたデータはスナップショットを提供するに過ぎず、ファジーなものである、と研究者らは述べている。
「もしあなたが、個々の人が何を感じているか、どうやって病気になるか知りたいと思うなら、個々人に焦点をあてた研究をしないといけない」と筆頭研究者のアーロン・フィッシャー助教授は述べている。「病気、精神疾患、感情、行動は個々の人々において時間をかけて表出される。多くの人々の一つの瞬間におけるスナップショットはこれらの現象を捉えることができない。」
「けれども、人々は医学や社会科学に対する信仰をなくす必要はない。その代わり、日常ケアの一部として科学的研究を実施する可能性をみるべきである。これは、我々が真に医療を個別化できる方法である」とフィッシャー助教授は述べている。
フィッシャーらは、健康な人と抑うつ、不安からPTSD、パニック症候群まで種々のレベルの疾患をもつ人を含んだ数百人規模のデータを統計モデルを用いて比較した。
6つの独立した研究で、研究チームはオンラインとスマートフォンでの自記式調査で集めたデータと心電図計で測定した心拍数データを解析した。結果は、集団にとって真実であることはかならずしも個人にとって真実ではないということを常に示した。
例えば、うつ病の集団を分析した結果から、彼らが極めて多くの心配を抱えていることが発見されたが、その集団に含まれる個々の人々に同じ分析を行うと、心配のレベルはゼロから平均よりかなり上まで広範囲のバラつきがみられたという。
さらに、恐れと忌避の関係(集団研究では一般に関係ありとされる)を調べると、多くの個人で恐れはある行動を避ける原因とはなっておらず、逆もまたそうであったという。
「フィッシャーらの知見は、時間をかけて変動していく個人的なプロセスを捉えることで個別化治療にきわめて接近できることを暗示している」と精神病理学の権威であるスティーブン・ヒンショウはコメントしている。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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