2018.2.21
, EurekAlert より:
リオ五輪で、有名な五輪スイマーのマイケル・フェルプスの背中にカッピング治療でついた丸い赤あざができていたのを覚えているむきもあるだろう。カッピングはいわゆる「吸い玉」を用いた陰圧をかけて血流を促すとされる中国が源流の治療法で、近年とみにその利用が知られるところとなって来た。局所の微小血流を促進することで、運動後の回復を促進し、疼痛を和らげ、関節可動域を増大すると謳われている。しかし、科学的にこれらのことが実証されているわけではない。カッピングを対象とした11件の臨床的研究のべ500人の被験者データを用いたシステマティックレヴューが科学誌上に発表されている。
データはコクラン、PubMed、SCOPUSなどのデータベースに掲載されている2016年10がつまでの臨床研究を対象として検討された。
結果、いくつかの研究ではその効果性が指摘されているものの、根拠として確実に効果があるといえるほどの結論は得られなかったと報告されている。この効果性としては疼痛減弱や関節可動域の増大などに対して、行われた治験では高リスクの研究デザインバイアスが見られ、結果が不均衡になっていると指摘されている。そのため、包括的にカッピング療法の効果性を検討できるようなエビデンスは存在せず、今後のさらなる検討が成されるまで、推奨することもできないという結果であったということだ。
検討された研究は、アスリートにおけるカッピング療法の有効性を示唆するものであっても、査読なしの論文として発表されているものであったり、臨床試験の行われている地域によるバイアスが見られるという点についても指摘されている。また、鍼灸を併用した結果について述べられていたり、適切に対照群が設定されている研究もなかったりということで、この療法の効果性を議論できる段階にはないと言うことなのだ。
臨床に研究が追いついていない分野が実質的には沢山あるが、カッピング療法もそのうちの一つであるということができる。今後さらに質の高い研究を以てカッピング療法の効果性について、検討を重ね、何千年にもわたって行われている伝統的なこの治療法について分析をするべきである、と研究者は指摘する。治療をしている人のエビデンス、有効でないとする人のエビデンス、さらには研究のための根拠など、より多くの検討がさらに必要であるとまとめられている。
出典は『代替および補完医療学雑誌』。 (論文要旨)
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