2018.2.21
, EurekAlert より:
ランニングは、慢性ストレスによる脳への影響を未然に防ぐのを助けるという。米国ブリガム・ヤング大学の研究。
ほとんどの人は、ストレス解消のためには少し運動すると良い、ということに異論はないだろう。新たな研究によって、運動、特にランニングには、ストレスのある状況において記憶を守るのに役立つことがわかったという。
ランニングには、慢性的なストレスによる海馬への悪影響を緩和するようだ。海馬は、脳の一部であり、学習と記憶において主要な役割を持っている。
「運動は、慢性ストレスの記憶に対するネガティブな影響を排除するための簡単かつ効率的な方法です」と筆頭研究者のジェフ・エドワーズ准教授は語っている。
海馬の内側で、記憶形成と呼びだしは神経シナプスつまりニューロン間の接続が時間経過とともに強化されて最適化される。このシナプスの強化過程のことをLPT(長期増強)と呼ぶ。慢性ストレスはシナプスを弱化させ、その結果LPTが低下し、記憶に影響する。エドワーズらの研究は、運動がストレス時に行われる場合、LPTが低下せず正常な状態が維持されることを発見した。
これを明らかにするために、研究チームは、マウスを用いて、介入群には4週間にわたって滑車のランニングをさせ(1日平均5km)、対照群にはさせなかった。各々の群の半数にストレスを与え、その1時間後にLTPを測定した。
ストレスを受けたマウスで、運動した群は、そうでない群に比べて、有意にLTPが高かった。研究チームはまた、ストレスを受けたマウスで運動した群は、ストレスを受けなかったマウスで運動した群と、記憶を試験する迷路走行実験で同等の成績だったことを発見したという。加えて、研究チームは、運動したマウスが迷路において有意に記憶錯誤が少なかったことを発見した。
この結果は、運動が学習と記憶をストレスによる認知能力のネガティブな影響から保護する有効な方法であることを示唆している。
「学習と記憶を改善する理想的な状況は、ストレスがなく、かつ運動する場合であろう」とエドワーズは語っている。「もちろん、私達は、いつもストレスをコントロールできるわけではない。でも、私達は運動をコントロールすることは可能だ。私達が、ただランニングしさえすればストレスのネガティブな影響に立ち向かえることを知ることで、エンパワメントを得ることができるのである。」
出典は『学習と記憶の神経生物学』。 (論文要旨)
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