2018.2.19
, EurekAlert より:
運動負荷試験中の血圧ピークについて定められたガイドラインは1996年に制定されたものであり、これまで医師が運動の安全性などについてのスクリーニングを容易にする上で有効な機能を果たしてきたことは事実であるものの、改訂が必要かも知れない、というイリノイ大学の研究者らによる報告。20年以上にわたって用いられてきた現行の収縮期血圧ガイドラインについて再検討を促すような初めての系統的研究であるという。
研究によれば、運動時の収縮期血圧のピークは年齢とともに増加し、60歳を境に平衡状態に到達する傾向がある。さらに研究で検討されていたどのグループも、40歳を超えるまで、現行の運動と高血圧のリスクとなる血圧閾値とされる収縮期血圧の90パーセンタイル値(男性で210、女性で190)まで到達しなかったという。これらのデータはつまり、古くからある研究では少し低い値を基準としていたようだということなのだ。閾値を下げていくことができなければ、とりわけ若年成人の段階では、例えばボーダー値のリスクのある患者に対しての運動処方で、治療可能な領域での最適な血圧を導く事がうまくできなくなってしまう可能性があるのである。
さらに、拡張期血圧でも男女での違いが見られるようだ。ピーク拡張期血圧は年齢とともに増大し、男性では収縮期血圧同様の平衡状態に到達する一方で、女性では平衡することがなく、生涯を通じて増大していく傾向が見られるようなのだ。この事は、男女での心血管の反応の違いが反映されている可能性があると研究者は推測している。例えば、女性では年齢とともに拡張期の心室硬度が男性に比べて悪化していく傾向があるのである。つまり、収縮期血圧についての再検討が必要であるのと同様に、拡張期血圧についても再検討が必要であるということなのだ。
本研究から言えることは、一つの基準で全て大丈夫というような値が存在しているということなのではなく、ピーク血圧は年齢とともに変化し、それ毎に基準も変化させていく必要がある、ということであり、また性別も考慮に入れるべきであるということなのである。
今後、さらなる研究を実施して、より一般的にどの程度の基準を置くことが必要であるのかについて検討を重ねていくと研究者は言う。というのも、本研究で検討されている対象者は94%が白人であり、70〜79歳の年齢層の対象者も有意に少ない傾向があるからである。それでもなお、運動負荷試験を行ってその結果を解釈し、スクリーニングに活用する際には、現行のガイドライン以外にも十分な留意を以て行う必要があることには違いがない、と研究者は指摘している。
出典は『高血圧』。 (論文要旨)
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