2018.1.25
, EurekAlert より:
大豆イソフラボン・アグリコンを食事に少量(0.6%)加えることで、筋委縮を軽減できることが明らかに。東京工業大学の動物実験から。
この大豆イソフラボンによる筋委縮抑制効果は、筋繊維におけるアポトーシス(※)経路をブロックすることによるものと考えられる。この成分には加齢性筋減弱症 (サルコペニア)を緩和することが期待される。
健康な筋肉は全身の健康に必要不可欠であり、また筋肉量は適切な代謝と運動能力の上で重要だ。残念なことに、世界中で高齢者人口が増加し、座る時間の長い人が増えることに伴い、健康な筋肉は活動性を失ってしまい、徐々に衰えるおそれがある。この過程は、長期の外傷によって引き起こされることもある。このような状態(委縮と呼ばれる)は、その人の人生において無数の制約を生じる可能性がある。
通常であれば、適切な運動と食生活が健康な筋肉量の維持に役立つにも関わらず、ホルモン療法やサプリメントの有効性も示されてきた。特に、大豆製品中のイソフラボンは 抗酸化物質としてよく知られている。いくつもの先行研究で、マウスなどのげっ歯類においてイソフラボンの筋肉量に対する効果が示されている。佐久間邦弘教授らの研究チームは、そのことをさらに掘り下げ、大豆イソフラボン・アグリコンが筋委縮を抑制できるかについて調査をすることにした。
マウスを用いた実験で、筋委縮症状態を誘発するため神経の切除を行い、大豆アグリコンを少量含むサプリメントを含む食事または普通食のいずれかを2週間与えて比較をした。すると、大豆アグリコン群は普通食群に比べて筋繊維が大幅に太く、神経切除による筋細胞の萎縮程度が有意に小さいことが明らかになった。
さらに、筋委縮を抑制した方法を探ってみると、イソフラボンによって筋細胞死(アポトーシス)を阻止することがわかったという。今回のような作用が、加齢による筋委縮の治療に役立つかどうかは不明だが、今後の研究で、疾患と加齢のいずれによる筋委縮にも有効であると明らかになることが期待される。
※アポトーシスとは、いわばプログラムされた細胞死。例えばオタマジャクシがカエルになるときに尻尾が消失したりするなどの現象がこれにあたり、あらかじめ決められたメカニズムによって、なかば自殺的に脱落死すること。
出典は『欧州栄養学雑誌』。 (論文要旨)
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